人口減少が止まらない日本に、残された手段 (11/4)

人口減少が止まらない日本に、残された手段
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191104-00030441-forbes-soci&p=1
2019/11/4(月) 13:00配信

Getty Images
先日、日本における出生数が今年、推計より2年早く90万人を割れる見通しであることがニュースに流れました。また、年金受給開始年齢の選択肢の幅を75歳まで拡大する方向も厚生労働省の審議会で決定され、夏には、「公的年金2000万円不足」問題も注目を浴びました。

これらは、日本における少子高齢化が加速度的に進んでいるという現実を改めて我々に突きつけるものです。では今、国としてどういう手段をとれば少しでもより良い方向に進むのでしょうか。

日本の人口ピラミッドは「棺桶型」

少子高齢化問題になると必ず現れるのが、「今後は日本だって北欧諸国のような中小規模国を目指せば良いんだ」という意見です。確かに「何でも多ければ良い」という時代は終わったという見方にも一理あります。

しかしこの意見は、「人口ピラミッドの形」という重要な視点を見落としています。健全な社会保障制度を保つ上で望ましいとされる人口ピラミッドの形は、出生数が多く、高齢者になるほど人口が萎んでいく「富士山型」ですが、日本の現在の人口ピラミッドは俗に言う「棺桶型」です。

「日本のような低レベルにまで出生率が下がった国で人口増加に転じられた国は世界史上先例がない」というのは、世界的に著名な人口学者ロン・スケルドン英Sussex大学名誉教授の言葉です。

仮に、日本の出生率が何らかの突発的な理由で大幅に上昇し始めたとしても、今日生まれた子どもが納税者となり社会保障保険者となるには約20年かかり、その間にも団塊の世代やそれ以降の方々が続々と退職し後期高齢者となっていきます。今既に「社会保障負担料が高い」と感じている方がいるとすれば、今後ますます負担が増加し給付水準は下がっていくのは不可避です。

このような暗い見通しを踏まえ、世界的投資家で親日家のジム・ロジャーズ氏は「優秀で英語のできる日本の若者は海外移住すべき」と繰り返し述べていますが、日本の優秀な人材(つまり本来なら日本の社会保障の担い手になって欲しい方々)の海外移住は既に始まっています。

人口減少を少しでも防ぐ、確実な方法
今、日本にできること

このような事態を少しでも防ぐ確実な方法が一つあります。社会保障制度に今すぐ参加する日本の労働人口を増やすこと、つまり20代以降の移民の受入れです。ここで想起されるのが、今年の4月に新設された在留資格「特定技能」と、今後5年間で約34万人の外国人労働者を受け入れる政策ですが、この新制度と社会保障問題の解決の間にはいくつかの亀裂が走っています。

まず、34万人の枠内で来日する外国人の大多数に付与される「特定技能I」では、通常は通算5年で母国に帰ることが想定されており、また仮に、日本政府の思惑通り34万人の外国人の方が来日してくれたとしても年平均7万人程度ですから、社会保障財政の救済には「焼け石に水」でしかありません。

今の日本に最も重要なのは、半永久的に日本に市民として生活し、納税し、年金制度や健康保険制度などに加入してくれる若者を呼び込むことですが、永住が想定される「特定技能II」は今のところ建設と造船分野に限られ、その詳細や見通しが不透明な形での見切り発車となりました。

ますますひっ迫する日本の社会保障制度を救うには、数百万(場合によっては数千万)人の永住を前提とした移民の新規受入れが急務ですが、移民受入れに経験の浅い日本が突然大量の移民を受け入れることはかえって様々な社会的軋轢を引き起こす危険があり、現実的ではありません。

だからこそ、移民受入れ後進国の日本は、欧州諸国などの失敗と成功から大いに学ぶ必要があるのです。

いずれにせよ、「特定技能I」のような、問題が噴出している技能実習制度の焼き直し的な政策の継続ではなく、少しずつでも半永久的に日本に移住してくれる外国人を増やしていく方向に今から舵を切らないと、日本に住む人々の老後は悲惨なものになるでしょう。真の意味での日本の国益、日本に住む人々の福祉のために、決断は待ったなしです。
橋本直子
 

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