非常勤講師は年収150万円、学会も自腹…大学教員は超格差社会だった (12/23)

非常勤講師は年収150万円、学会も自腹…大学教員は超格差社会だった
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2019/12/23(月) 8:54配信週刊SPA!

非常勤講師は年収150万円、学会も自腹…大学教員は超格差社会だった
(日刊SPA!)

 大学の教員といえば、一般企業よりも高収入というイメージを持つ人もいるだろうが、実は教授を頂点に准教授、助教、専任講師、非常勤講師とピラミッド型の格差社会。博士号を取ったのに専任講師になれない、というポスドク問題が取りざたされた頃から、非常勤講師がワーキングプアであることが当事者側から発信されるようになった。

 非常勤講師の平均年収は教授クラスの約5分の1程度と驚くほど低く、さらに大学側から理由不明の「雇い止め」に遭う例もある。そんな非常勤講師たちの現状を、首都圏大学非常勤講師組合の副委員長の松村比奈子氏(専門は憲法学)に伺った。

早稲田大学の教授は年収1500万円? 一方地方では…
まず松村氏は、大学教員の年収の格差を次のように話す。

「教壇に立って講義し、テストの作成や採点、さらに卒論の指導など、教員としての仕事内容は同じですが、年収の格差が実にはなはだしいです。早稲田大学では1500万円と聞いているのに対して、国公立での平均は約900万円で、地方の私立では400万円というところもあります。一方、非常勤は専任教員と同じ数の講義を担当したとしても、年収は150万円から200万円です」

 なぜ非常勤講師の年収が低いかと言えば、講義のコマ数で給与が決まるからだという。

「一コマ(90分授業)が2万〜3万円。以前は、交通費の出ない大学もありました」

 そのため、非常勤講師は複数の大学を掛け持ちして教壇に立つことが多い。しかも1コマ当たりのギャランティは変わらない。なぜこのように低い設定なのだろうか。

「非常勤講師は大学側に、労働条件や値段を聞いてはいけないという暗黙の了解があります。コネ採用が多いので、相手を立てろという無言の圧力もあります」

 非常勤講師の仕事は公募もあるが、紹介によって決まることが多いそう。専門職に特化した求人サイトや紹介業がある中で、大学の教員の世界は旧態依然としているのだ。

学会には自腹で出席
さらに非常勤講師は、自腹を切って学会に出席することが当たり前だという。

「専任講師は大学側から学会費や交通費などの援助があります。ところが非常勤はそれがないので、自前で参加です。学会の年会費だけでも平均1万円以上です」

 複数の学会に登録すると年間6万円以上になることもあるそう。それでも学会に参加する目的は何なのか。

「学会参加は研究者であることの必要条件です。見識を深めることはもちろん、人脈を広げたいというのもありますね。専任教員の採用は、必ずしも実力主義によってではなく、コネや関係者の相性で決まることもざらです。

 そのため学会後の懇親会は、平均6000円ほどの参加費がかかりますが、人脈獲得に欠かせないものです。遠方で学会があるときは、宿泊費を節約するために、日帰りで強行参加することもありますが、それでも自分への投資と割り切っています」

ワーキングプアの深刻化は研究者のプライドが影響?
非常勤講師の窮状には社会的背景があった。

「90年代までは、大学院の進学率が多くなかったんです。そのため博士号を取得してから、2、3年は非常勤で働いたとしても、大学院卒のほとんどが専任講師になれました。

 ところが、91年の宮澤政権での大学院倍増計画によって、大量のワーキングプアが生じてしまった。政府が世界に通用する理系のドクターを増やそうとして、博士課程修了と同時に博士号も取得できるのが一般的になったからです。一方文系のドクターが放置され、非常勤講師が増大してしまった。30年近く経っても、状況は変わっていません」

 年収の格差はもとより、窮状をさらに悪化させるのは、非常勤講師の「雇い止め」だと松村氏は指摘する。

「私が首都圏大学非常勤講師組合に入会したきっかけが雇い止めでした。2000年秋にある大学から、来年の春に契約終了と一方的に通告されたのです。カリキュラムが変更したからというあいまいな理由のため組合に入り団体交渉をしてもらって、終了を1年後に延長してもらいました。組合の役割は重要です」

 非常勤講師が置かれている現象を聞くにつれて、好きでなければ続かない職業だと感じる。何とも解決策が見えない話だが、深刻化を防ぐことはできないのだろうか。

「ワーキングプアを訴えようにも、個人名や顔出しは絶対にしたくないというのが非常勤講師の本音。学生や近所の人たちに知られてしまうのが怖い。院卒者、研究者としてのプライドも影響していると思います」

<取材・文/夏目かをる>

―[シリーズ・俺たちの貧困]―

【夏目かをる】
コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマン取材をもとに恋愛&婚活&結婚をテーマに執筆。難病克服後に医療ライターとしても活動。ブログ「恋するブログ☆〜恋、のような気分で♪」

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