20代非正規雇用者のユーウツな年末年始。年収500万円でも「正社員じゃないと…」 (1/3)

20代非正規雇用者のユーウツな年末年始。年収500万円でも「正社員じゃないと…」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200103-01632617-sspa-soci&p=1
2020/1/3(金) 8:54配信 週刊SPA!

20代非正規雇用者のユーウツな年末年始。年収500万円でも「正社員じゃないと…」
(日刊SPA!)

 昨今、年末年始やゴールデンウィークなどの長期休暇に帰省したくない人が増えているという。理由としては「帰省ラッシュに巻き込まれたくない」「配偶者の実家ではアウェーだから」「中学時代の友人に会いたくない」「親戚から恋愛・結婚について問われるのが嫌だ」などなど。

 こうした中、契約社員として働く20代の女性は“家族間格差”を思い知るため、業務委託として働く男性は“フリーター扱い”されるのが嫌で、帰省するか悩んでいた。

帰省するのが憂鬱な契約社員の事情

 12月上旬、筆者の友人はソワソワしていた。都内で契約社員として働く28歳。お給料は高くないが、好きな仕事に就けて彼女なりに充実した日々を過ごしていた。

 彼女は三姉妹の真ん中で、今はみんな家を出ている。だから正月はなるべく両親の元に帰り、正月を過ごすのだそうだ。「年末年始は航空券が高いけど、お父さんとお酒が飲みたいから、早く冬休み来ないかな」と家族との再会に胸を躍らせる。

 では、ソワソワしている理由とは何なのか。それは、年末年始、実家のある宮崎県に帰るのだそうだが航空券をとっていなかったからだ。

 ネットで航空券を探し始めたが、時すでに遅し。「航空券が往復4万円!もっと早く取ればよかった!」と大きなため息をついた直後、投げやりに、「帰るのやめようかな」と言う。実は、今まで真剣に航空券を探そうとしなかったことには、事情がある。師走で仕事が忙しかったせいではない。

 筆者が「せっかくなんだから帰省しなよ」と言うと、彼女はこう続けた。

「本当に帰りたい。でもさ、なんか帰ったら帰ったで嫌なんだよね」

 航空券の高さにひるんだついでに、彼女の中で忘れていた“ある感情”が蘇る。劣等感だ。

「私のお父さん、医者でさ。お姉ちゃんは地元で有名な企業で働くキャリアウーマンで、学生の妹も来年から大企業での就職が内定している。でも私は契約社員で、28歳なのに何も成し遂げてない。別に仲悪くないけど、なんとなくお姉ちゃんとは話しづらい」

 偉大なる父親、将来有望な姉と妹。彼らと自分を比較し、無意識に感じる溝。早く“そちら側”に行かないといけないと思いつつ、焦ってしまう。

 彼女は「一朝一夕で成し遂げられない。正月リフレッシュして、また仕事を頑張ろう」と自分を落ち着かせ、結局帰省することにした。と、しばらく帰省するか悩んでいたら、航空券代は5万円になっていた。

Web系の仕事内容を田舎の親族に説明するのが億劫…

 都内のWebベンチャー企業に週3日常駐し、それ以外は自宅を事務所代わりに数社でリモートワークする金井裕介さん(20代後半・仮名)。自身のスキルアップを目指してIT系の企業を渡り歩いてきた。

 正社員として働いていた時期もあるが、より多くの企業でさまざまな課題に向き合いたいとの思いから、現在はあえて正社員ではなく、個人事業主として“業務委託”で働くことを選んだ。収入は500万円強ある。しかし……。

「帰省するたびに両親や親族からは『大学まで出て、いつまでフラフラしているつもりなの?』って。僕の実家は新潟県の田舎。やっぱり、正社員以外の働き方については否定的で、もはやフリーター扱いですね。決して収入が多いわけではありませんが、普通に生活できます。しかし、『早く就職しろ』って、そればかり」

 また、Webやネットにまつわる職種ということで、高齢の親族には何度仕事の内容を説明しても理解してもらえないという。

「かろうじてスマホをもっているレベルの親族たちには、毎年同じことを説明しているにもかかわらず、『裕介くんは仕事なにやってるの?』って聞かれる。それが億劫なので、今回の年末年始は忙しいふりをして、帰省はしないでいいかなって」

 ――これまでの正月の形。年の瀬に帰省し大掃除に参加、大晦日は紅白を見ながら蕎麦を食べる。元日は初詣に行って、普段より美味しいものを食べながらお酒を飲んで。そうこうしていたら親戚が来て、ワイワイ酒盛り。そうやって三ヶ日をすごし、4日から働き始める。

 しかし、契約社員や業務委託など、非正規雇用者が増えつつある昨今。総務省から出された2018年労働力調査「2018年平均速報値」によれば、正規雇用労働者は3476万人、非正規雇用労働者は2120万人にのぼるという。働き方も変わりつつあるが、その中には“帰省したくてもユーウツ”という人も少なくないのかもしれない。<取材・文/星谷なな>

―[特集「年末年始」]―

日刊SPA!
 

この記事を書いた人