非正規賃上げ助成 実績数人 政府事業、想定は7000人 (2/9)

非正規賃上げ助成 実績数人 政府事業、想定は7000人
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202002/CK2020020902000147.html
東京新聞 2020年2月9日 朝刊

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 非正規社員の基本給を引き上げた企業に政府が人数に応じて助成金を支給する事業を巡り、二〇一九年度の適用が数人にとどまり、七千人の想定を大幅に下回っていることが八日、分かった。政府は利用が低迷しているにもかかわらず、二〇年度予算案では事業費を前年度より二億円多い七億円とした。企業に賃上げを促す安倍政権の看板政策で、検証が不十分なまま、なし崩し的に増額されている。

 政府は正規と非正規の不合理な所得格差をなくす「同一労働同一賃金」の取り組みを進めているが、企業の動きは鈍い。連合も二〇年春闘で非正規社員の賃金、待遇の改善に力を入れているが、助成金による後押し効果は限定的となりそうだ。

 問題の事業は、社員の能力開発や賃上げを狙った「キャリアアップ助成金」のうち、有期契約である非正規社員の社会保険加入と基本給増額を促す「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」だ。

 助成額は社会保険に加入させた上で、基本給の増額割合に応じて段階的に増える。例えば、中小企業の場合、一人当たり3%の引き上げで二万九千円、最高の14%以上の引き上げでは十三万二千円となる。支給は一回に限られる。

 これまでの適用実績は、制度の始まった一七年度がゼロ人で、一八年度は二事業所の二人のみ(計五万七千円)。一九年度も数人と極めて低調なため、政府は利用拡大に向け、四月から基本給増額の要件を緩和する方向で見直しを検討している。

 厚生労働省の担当者は「助成金の存在自体を知らない事業者も多いと思うので、広報活動にも力を入れて適用拡大を目指す」とコメント。二〇年度に一人当たりの支給単価を増やした上で想定する五千人の利用についても達成可能だとの楽観的な見立てを示している。

 政府関係者からは「財務省から厳しい査定を受ける一般会計と異なり、今回のように労働保険特別会計で行う事業の場合、制度の創設や補助金増額の見通しが甘くなりやすい」との声が出ている。
 

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