東京新聞 2013年3月30日
保育所に入れない待機児童が依然、減らない。各地で入所できない子どもの親らが一丸となって行政へ抗議を続けている。子育て世代の思いを自治体に届けるために、もっと声を上げよう。
国の基準を満たした認可保育所に子どもを預けられない親らが、次々と自治体に行政不服審査法に基づく異議申し立てを行った。東京都杉並区から足立区、目黒区、さいたま市などに広がっている。
子どもを預けて働きたい人には預け先がない事態は死活問題だ。
申し立てを受けた杉並区は、認可保育所の受け入れ枠拡大や新設、認可外施設の拡充を決めた。
やればできるではないか。
危機感が薄かったと言わざるを得ない。これまで保育所運営費などとして自治体に来ていた国の財源は一般財源化されている。使い道は首長の判断に左右される。
名古屋市や横浜市では市長が積極的に保育所整備を進めている。他の首長も危機感を持ち対策にリーダーシップを発揮すべきだ。
子育ての問題は、その時期を乗り切ると当事者ではなくなるため、なかなか子育て世代の苦境や要望を訴える大きな声になりにくかった。今回の親たちのやむにやまれぬ行動は、行政に問題の深刻さを再認識させた意義がある。
声は上げ続けてほしい。認可保育所より認可外施設の保育料は高い。利用者の負担軽減に自治体によって補助金を出しているが、額が自治体間で違う。子どもの医療費への補助額や期間も同様だ。こうした支援格差にも目配りして支援の充実など思いを行政に伝えることで改善は進む。
保育所整備には知恵を絞る必要がある。認可保育所の増設、新設は当然で最優先すべきだ。学校の空き教室の利用など生かせるアイデアはある。ただ、土地の確保などに限界があり、都市部では短期間に必要な整備が進まない。
保育士資格のある人などが自宅で預かる「保育ママ」の増員、定員に空きのある幼稚園での受け入れ、幼保一体施設の認定こども園、事業所内に設置する保育所などの整備も促してほしい。
公的な保育所は平日の昼間にフルタイムで働く親を前提に運営されている。働き方が多様化しているのに夜や早朝、休日に働く人、短時間預けたい人は預けにくい。
今子どもを預けて働きたい人は待っていられない。短期間に多様な保育ニーズに応えるために、できる対策はすぐ始めるべきだ。