第99回 書評? NHK取材班『名ばかり管理職』

『週刊エコノミスト』2008年10月14日号

NHK「名ばかり管理職」取材班著
『名ばかり管理職』NHK出版 生活人新書、735円

月平均204時間、残業代なし…
あまりに過酷な「管理職」の実態

NHKの番組「クローズアップ現代」は昨年11月、過酷な長時間労働を強いられながら残業代も支給されない「名ばかり管理職」を取り上げた。それが反響を呼び、「NHKスペシャル」が取材を重ねて今年3月の放送でさらにその実態に迫った。その放送にいくつかの情報を加えて編まれたのが本書である。

第1章は若い正社員の悲惨な働き方を見詰める。そこに登場する松元洋人さんはあるファミリーレストランにアルバイトとして採用され、半年後に正社員、それから2年足らずで店長になる。その翌年に過労で倒れ、今も意識不明である。彼の発症前6カ月の残業は月平均204時間。しかし、残業代は付かず、倒れた日に銀行に振り込まれた金額は18万7000円だった。

第2章は日本マクドナルドの現役店長、高野廣志さんの裁判の闘いを追っている。東京地裁で今年1月に出た判決は、原告の主張通り、店長は労働時間や残業代に関して、労働基準法の規制を受けない管理職の3条件((1)経営者と一体的な立場にあり、(2)出退勤が自由で、(3)地位にふさわしい報酬を得ている)を満たしていないと認めた。

第3章は取材班の独自調査によるデータが興味深い。

管理職に対する調査では、自分が「名ばかり管理職」に該当すると思うかと尋ねた。その結果、「そう思う」が23・4%、「ややそう思う」が33・6%で、合わせると57%の人が、自分を「名ばかり管理職」と認識していることが明らかになった。

企業に対する調査では、自社に管理職の3条件に当てはまらない管理職がいると答えた企業が63%に上った。

残る第4章と第5章は、コスト削減と規模拡大のために「名ばかり管理職」に依存してきた企業の責任と、問題の拡大に手をこまねいてきた行政の責任を問い質している。

本書が映し出す働き方はあまりに過酷である。若い労働者は、正社員として倒れるまで働かされ、使い捨てられたくなければ、低賃金の非正規雇用から抜け出せずワーキングプアに落ちるしかない。迫られているのは「過労死か、さもなくば貧困か」(本の帯)の選択である。

しかし、希望はある。マクドナルドにおける高野さんの闘いは、妻に励まされて声を上げ、労働組合に入るところから始まった。今では後に続く動きが広がり、企業や行政をも突き動かすまでになった。読者は、本書から、問題を解決するにはあきらめずに声を上げることが重要だと学ぶに違いない。

 

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