6月27日、電力各社の株主総会が一斉に開かれました。今年、最も関心を集めたのは、東電福島原発の事故原因が明らかになっていないなかで、大飯原発の再稼働に走る関西電力でした。同社の株数の9%を保有する筆頭株主の大阪市が「可及的速やかに全ての原子力発電所を廃止する」ことを定款に盛り込むことを求める株主提案を行ったことも、関電株主総会への関心を高めました。自治体では、大阪市に比べて持ち株は少ないとは言え、神戸市や京都市が株主提案に参加したことも注目されました。
以前から反原発あるいは脱原発の株主提案を行ってきた市民株主グループも9つの株主提案(第3号議案から第11号議案まで)を行いました。それらを含め株主提案が全部で28議案に達したというのは、関電のみならず、日本の株主総会史上、例のないことだと思います。
賛成率が最も高かった株主提案は「社外取締役の積極採用」を求める議案の38%でした。「取締役報酬の個別開示」を求める議案も33%と、3割を超える賛成を得ました。私は本欄(第120回)で「大阪市の関西電力に対する株主提案」を取り上げて、「賛成率は、高い場合、大阪市と他の自治体が約10%+個人株主が約10%+その他の株主が10%で、およそ30%になる」と予想していました。投票結果はこの予想から大きく外れてはいませんが、高い賛成率を得たのは、原発関係の議案ではなく、他の国ではすでに実行されている企業統治のあり方にかかわる議案に限られているのは残念です。
原発関係の議案の賛成率は、大阪市が提案した「速やかな全原発の廃止」が17%、神戸、京都両市が提案した「脱原発依存」(「原発に依存しない電力供給体制の早期構築」)が22%でした。昨年の関電の総会では原発関連の株主提案の賛成率は約4%でしたから、今年は10%以上の上積みがあったことになります。
定款変更の形式をとった株主提案の可決には、3分の2以上の賛成が必要です。大阪市以外の大口株主が原発維持の姿勢を変えていないもとで、「原発廃止」や「脱原発依存」の議案が否決されるのは最初から分かっていたことです。否決されたからといって、株主提案が無意味であったとか、敗北したということを意味するものではありません。関電がまともな会社であれば、上記の17%あるいは22%という賛成に示される株主の意思を無視することはできないはずです。全体の1割近い株を保有する筆頭株主の道理ある提案を黙殺することは、会社経営の常識では考えられません。
今年の関電株主総会の出席者数は過去最多だった昨年の約2200人を大きく上回って、今年は3842人と過去最多を更新しました。所要時間も過去最長だった昨年の4時間51分を超えて5時間32分でした。質問が1人3分に制限され、まだ大勢の質問希望者がいるなかで議事が一方的に打ち切られたという問題は残ります。それでも、原発関連の株主提案が、関電株主の間だけでなく、広く社会の関心を集め議論を呼んだことや、議場で株主が次々と質問に立って、原発維持に固執する関電の経営姿勢とその責任を追及したことは、今後の議論や運動にとっても大きな意味を持っていると考えられます。
大阪市、神戸市、京都市などの自治体株主は、3.11以前は大口の法人株主と同様に「お任せ経営」で、関電の総会ではすべて白紙委任をしてきたと考えられます。それが一転して、今回、株主提案を行って一定の方針のもとに議決権を行使したことは、提案内容の評価とは別に、よいこととして評価できます。とはいえ、大飯原発の再稼働を認める最近の橋下市長の言動から見ると、大阪市の今回の株主提案は一時の人気取りの演出であった疑いもあります。果たしてそうなのか、そうでないのかの判断は、大阪市が今後関電にどう働きかけていくのか、また来年の株主総会でどういう提案をするのかによってなされるのではないでしょうか。