第231回 拙著 『過労死は何を告発しているか――現代日本の企業と労働』が出ました

拙著『過労死は何を告発しているか――現代日本の企業と労働』(岩波現代文庫、2013年8月20日)が出ました。

<目次>
序 章 過労死が社会問題になって四半世紀
第1章 企業中心社会はいかにして成立したか
第2章 日本的働きすぎと労働時間の二極分化
第3章 賃金不払残業の手法と実態
第4章 日本的生産システムと過労死
第5章 仕事で命を奪われるホワイトカラー
第6章 多発する若者の過労自殺と大学生の就活自殺
終  章 過重労働対策と過労死防止運動

以下に「あとがき」から概要を簡単に紹介します。

本書は現代日本の労働時間と過労死をテーマにした拙著『企業中心社会の時間構造――生活摩擦の経済学』(青木書店、1995年)をもとにしています。しかし、今年が「過労死110番」全国ネット開設25周年にあたることから、この四半世紀を視野に入れて全面的に改稿することになりました。旧著の骨格は残っていますが、大半は岩波現代文庫のための書き下ろしの新編集版です。                               
                                                                                                                                   
序 章「過労死が社会問題になって四半世紀」では、この四半世紀を振り返り、過労死はいかにして社会問題化したか、また過労死は日本人の働き方について何を告発してきたかを述べています。

第1章「企業中心社会はいかにして成立したか」では、人びとを働きすぎに追いやっている現代日本の企業中心社会を、1970年代半ばまでの高度成長と、70年代半ば以降のストライキの消滅的減少とに関連させて考察しています。

第2章「日本的働きすぎと労働時間の二極分化」では、政府文献が働きすぎの実態をどのようにとらえてきたかを見たうえで、「男は残業、女はパート」の働き方が一般化した日本の労働時間の特異な構造を明らかにしています。

第3章「賃金不払残業の手法と実態」では、不払残業の実態把握の難しさに触れながら、若干の調査結果を紹介し、政府の不払残業対策の推移を跡付け、長時間労働と不払残業の解消がいっこうに進まない理由を述べています。

第4章「日本的生産システムと過労死」では、トヨタシステムに代表される日本的生産システムの現場主義的特徴を踏まえて、工場の製造工程における作業長の全能性が殺人的長時間労働によって購(あがな)われたものであることを検証しています。

第5章「仕事で命を奪われるホワイトカラー」では、過労死はブルーカラーに多く、過労自殺はホワイトカラーに多いことを確認して、証券営業マン、教員、医師(勤務医)などの精神的ストレスをともなった長時間労働の特質を考察しています。

第6章「多発する若者の過労自殺と大学生の就活自殺」では、若者の過労死・過労自殺と、大学生の就活自殺の増加を、「ブラック企業」の横行が問題になるほど雇用環境が悪化してきたことの反映としてとらえています。

終章「政府の過重労働対策と過労死防止運動」では、政府の過重労働対策の経緯と、この四半世紀に拡がった働きすぎの新しい要因から説明し、2011年に本格的にスタートした過労死防止基本法(仮称)の制定運動の展望を述べています。

<宣伝コピー「岩波書店8月の新刊」より>
なぜ日本人は死ぬまで働くのか。過労死の四半世紀を踏まえて、働きすぎのメカニズムを検証する。過重労働とストレスの要因を解明し、過労死・過労自殺をなくす方策を展望した本書こそ、全勤労者必携の一冊。

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