在日外国人の公務員採用 門戸開く 闘争の記録刊行 (4/6)

在日外国人の公務員採用 門戸開く 闘争の記録刊行

大阪日日新聞 2020年4月6日

 在日外国人が大阪市の公務員の「門戸」を開いたのは、徐翠珍(じょすいちん)さん(72)=西成区=の闘争があったことはあまり知られていない。克明な記録として『華僑二世徐翠珍的在日 その抵抗の軌跡から見える日本の姿』が刊行された。待望の書である。昨年の改正入管法は労働不足を補う「第二の開国」といわれたが、徐さんは在日の歴史が無視されていることに危機感を持ち本書を執筆、現在の在日外国人の状況を照らし出す検証の書ともなっている。

〔写真〕「在日の歴史が無視されていることに危機感を持ち、本書を執筆した」と話す徐さん

 在日中国人二世である徐さんが1973年に西成区に市立保育園の保育士として初めて勤めるまでは「在日中国人保母が実現すれば一般感情が許さない」「自国に帰れば」など耳を疑う言葉が、市との交渉などの場で投げ掛けられた。

 徐さんは短大を卒業後、民間保育所で勤めていたが、勤務先が市立保育所に移管された。このため当然、市立での勤務になるはずが市から拒否された。71年7月、24歳の時、国籍条項を根拠に解雇された。この不条理から闘争が始まった。当時、生後間もない長男を抱えていたが、市との交渉に立ち続けた。闘争は市立保育所に採用されるまで1年半、地域の在日朝鮮人のオモニ(お母さん)たちも徐さんを支える会の支援をしてくれた。

 この闘いのあと、指紋押捺(なつ)拒否闘争▽天皇恩赦による裁判の強制打ち切り裁判▽靖国合祀(ごうし)イヤです訴訟-など、徐さんの人権獲得の運動はやむことがない。

 徐さんは「著書では中国上海で日本の侵略に抗して生きた母親の誇りある生き方が私を支えてくれたことも明らかにしています」と話している。

 東方出版、46判、税込み1650円。

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