伍賀一道(金沢大学名誉教授) 「最新の雇用・失業統計は何を示しているか」 (5/6)

 次に総務省「労働力調査(基本集計)」(2020年3月分)を見ましょう。図6のとおり、3月の完全失業者、完全失業率ともに増加傾向にあります。完全失業者は2月より17万人増加、19年3月期(174万人)と比較すれば2万人の増加です。3月以降、経営難による解雇や退職強要などの事例が増加していますが、「労働力調査」にはまだ顕著な変化は現れていないようです。しかし、完全失業者のなかで自発的な離職(自己都合)が減少する一方、事業主都合による離職が増加するなど、今後の失業情勢の悪化を予感させます。

図6 完全失業者・完全失業数の推移

 図7は正規雇用と非正規雇用の人数について、昨年1月から今年3月までの推移を、また図8および図9は正規雇用および非正規雇用の対前年同月比の増減数を表しています。19年3月から20年3月にかけて正規雇用は67万人増えています。景気後退局面に入ったにもかかわらず、昨年12月以降も正規雇用の対前年比が増えているのは妙です。一般職業紹介状況の正社員の新規求人数は20年1月以降減少しているのですが( 図10)、タイムラグやその他の要因が重なって雇用の実態が「労働力調査」に反映されていないのではないでしょうか。

図7 正規雇用・非正規雇用の推移

【訂正】本頁に以下の誤記がありました。お詫びして訂正します。
 4頁 (誤)「非自発的な離職(自己都合)」→ (正)「自発的な離職(自己都合)」
(なお、5/31に本文を訂正しました)

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