伍賀一道(金沢大学名誉教授) 「最新の雇用・失業統計は何を示しているか」 (5/6)

 そこで契約社員について、昨年3月から今年3月までの増減を産業別に見たのが表2です。製造業で11万人減っています。特に輸送用機械器具製造業は6万人の減ですが、これは自動車メーカーの期間社員の雇い止めによるものでしょう。建設業、宿泊業・飲食サービス業、教育・学習支援業の減少も目立っています。

表2 契約社員の産業別増減(2019年3月→20年3月)

 学生のなかでアルバイトの減少による生活と学業継続の困難が大きな問題となっています。図14は学生アルバイト数の推移を示しています。毎年3月は学生の卒業にともなって減少するのですが、今年3月は例年以上に大幅な減少になっています。2月(181万人)から3月(146万人)にかけて35万人減っています。

 ところで、ここで取り上げた総務省の「労働力調査」は都道府県の統計調査員が調査対象として抽出された約4万世帯を訪問し(無作為抽出による)、15歳以上の世帯員全員(約10万人)に調査票を配布し、回答してもらう方法で実施されています。コロナ危機が深刻化するなかで調査自体が難しくなっていることが懸念されます。この調査対象となった世帯のなかには派遣切りなどで職を失い、困難をきわめている人々も含まれていると考えられますが、その実情がこの調査にどこまで反映されているかはっきりしません。毎月の雇用・失業の全体的動向を知るうえで「労働力調査」は唯一の貴重な情報源ですが、雇用・失業の実態はこの調査で示されているよりも、もっと厳しいのではないでしょうか。5月末に公表される4月分の調査結果に注目したいと思います。


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