トヨタ自動車が、実際の残業時間に関係なく月45時間までは手当を一律に支給する仕組みを労働組合に提案した。職場の一線を担っている係長級に効率のいい働き方を促すが、長時間労働を固定化しかねないと心配する声もある。
トヨタ、本人裁量で残業へ 労組に提示、最大7800人
労働基準法は、労働時間を原則1日8時間まで、週40時間までと定めている。トヨタを含む多くの企業では超過労働を認める協定を労使で結んでおり、目安となる上限は「月45時間、年360時間まで」だ。
労働基準法は、労働時間を原則1日8時間まで、週40時間までと定めている。トヨタを含む多くの企業では超過労働を認める協定を労使で結んでおり、目安となる上限は「月45時間、年360時間まで」だ。
トヨタの新制度は、残業時間が、この月45時間に満たなくても45時間分の手当月17万円を一律に支払う。事務系や技術系の係長クラスの約7800人のうち本人が希望し、会社が認めた社員を対象とする。12月の導入をめざしており、労組との合意を急ぐ。
雇用や労働の問題に詳しい日本総研の山田久理事は「長時間働くことだけでは評価しない、というメッセージ。意識改革を狙っているはずだ」とみる。
トヨタの新制度は、労働基準法に触れないよう、45時間を超えた分は、その時間に応じた手当を別途支払う。月80時間、年540時間という上限は守り、平日5日の連続休暇も義務づける。
それでも副作用を心配する声はある。日本労働弁護団常任幹事の佐々木亮弁護士は「45時間分は働かないと『給料泥棒だ』となれば時短のメッセージにはならないのでは」と指摘する。
トヨタ労組は今後、会社提案を各職場に伝え、対応を話し合う。幹部の一人は「効率よく働く人が報われる仕組みならいいが、長時間労働を助長することがないかは注視したい」と話している。
政府が国会に提出している労働基準法の改正案は、アナリストなどの一部の専門的な職種を対象に労働時間と賃金の関係を切ろうとしており、「残業代ゼロ」との批判もある。
一方のトヨタは、現行法に沿って自社にあった仕組みをつくろうとしている。(山本知弘)