経団連会長 “賃上げ継続が重要 新時代の雇用議論を” (1/1)

経団連会長 “賃上げ継続が重要 新時代の雇用議論を”
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2020年1月1日 0時05分働き方改革

経団連の中西会長は、ことしの春闘について、賃上げの継続が重要だとしたうえで、企業の競争力を発揮できるよう、新たな時代の働き方や人事制度について、労使間で議論すべきだという考えを示しました。

中西会長は、報道各社のインタビューで、ことしの春闘について「日本の賃金水準は先進国の中では劣後している。優秀な若い人たちが海外の企業で働きたいと思うのも事実なので、賃上げの勢いは決して失ってはいけない」と述べ、賃上げの継続は重要だとの考えを強調しました。

その一方で、中西会長は、「日本経済が国際的にも競争力を発揮できるような職場環境をどう作っていくかが重要だ。経団連が賃上げの目標を何%と示すことはもうあまり意味がない」と述べ、経団連としては、去年に続いてことしも賃上げの数値目標は掲げない方針を示しました。

そのうえで、ことしの春闘の労使交渉では、新卒一括採用や終身雇用など日本特有の雇用システムを見直すことも含め、新たな時代の働き方や人事制度について議論すべきだという考えを示しました。

経団連は春闘の経営側の指針となる報告書で、日本特有の雇用システムが「必ずしも時代に合わないケースが増えている」として、各企業に再検討を促す方針で、ことしの春闘では雇用の在り方をどう見直すかをめぐっても、活発な議論が交わされることになりそうです。


【関連情報】【経団連会長発言 雇用関連】
□デジタル技術を活かし、人間的で幸福な暮らしの実現と社会課題の解決を 2020年1月1日
―経団連会長新年メッセージ―
https://www.keidanren.or.jp/speech/2020/0101.html
一般社団法人 日本経済団体連合会
会長 中西 宏明

昨年は多くの行事・イベントが続く年だった。令和の時代が始まる天皇陛下のご即位があり、大成功を収めたラグビーワールドカップに先立ち、日本で初めてのG20が大阪で開催され、経団連は先行して経団連会館でB20を主催した。多くの国々で政治と経済の不安定な状況が発生しているなかで日本経済は安定的な成長を続けていることから、日本は世界でもっとリーダーシップを発揮すべきとの声を聞く。

2020年を迎えるにあたり、わが国成長戦略の要であるSociety 5.0をしっかり社会実装していく決意を新たにしている。デジタル技術の強みを活かして、より人間的で幸福な暮らしを実現し、社会課題の解決を図っていくことでSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献することができる。

その実現にはこれまでの個別課題の解決だけでは不十分であることから、分野横断的な活動を展開するデジタルトランスフォーメーション会議の議論を進め、新たなルールづくり、制度改革の方向性を積極的に打ち出していく。産業構造の変革を進め、新たな挑戦を促す競争環境の整備にも果敢に取り組んでいく。

少子高齢化に伴う人口減少の課題を真正面からとらえて、国民の将来不安を解消し、安心で明るい未来の構築に向けた成長戦略・財政健全化・全世代型社会保障改革を一体的に図る「経済構造改革」の実現を目指す。

昨今の台風被害、特に集中豪雨等の異常気象から地球温暖化が一層進みつつあると認識せざるを得ない。経団連は昨年4月に「日本を支える電力システムを再構築する」を提言した。そこで指摘した諸課題と施策の実現に向けて、日本の化石燃料依存からの脱却を進め、地球規模の課題を日本がイノベーションで先導すべく、経済界が総力を挙げて取り組んでいく。

激動の国際情勢はその変化の速度を増しており、先を見通すことは容易ではない。そうしたなか、わが国の政治と経済の安定を強みに、自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化に向けた民間外交を展開し、グローバルな経済社会の安定と成長に貢献していきたい。

さらに今年は夏に東京オリンピック・パラリンピックが開催され、2025年には大阪・関西万博があり、多くの国々から多数のお客様が来日される。その成功に向けて皆様のより一層のご支援、ご協力をお願い申しあげる。

□定例記者会見における中西会長発言要旨 2019年12月23日
https://www.keidanren.or.jp/speech/kaiken/2019/1223.html
一般社団法人 日本経済団体連合会

【雇用】
機能・品質に優れたコモディティ、サービスを広く内外に提供して稼ぐビジネスモデルから、顧客と共に考え付加価値を提供するモデルに転換していく日本企業が増えていけば、おのずと日本経済全体の発展につながっていくと期待している。

新卒一括採用・年功序列・終身雇用をセットとする従来の日本型雇用システムでは、こうした転換に対応できる人材は育ちにくい。企業における雇用形態の変化と社員のエンゲージメントの向上が一体となって進んでいくようでなければいけない。こうした中、これまでの日本型雇用システムだけというわけにはいかず、ジョブ型雇用などを組み合わせていくことになるであろうし、それが雇用流動性を高めることにもなる。実際、企業は経済価値・環境価値・社会価値を重視しており、社員にしても、自分の仕事が社会に貢献しているとの認識が充実感や、やる気につながる傾向が強い。この変化をよく踏まえ、労使間でも議論を深めていく必要がある。

□定例記者会見における中西会長発言要旨 2019年12月9日
https://www.keidanren.or.jp/speech/kaiken/2019/1209.html
一般社団法人 日本経済団体連合会

【春季労使交渉】
来年の春季労使交渉の焦点は、社員のエンゲージメント向上のための働く環境整備と賃金引き上げのモメンタムの継続である。前者については、「働き方改革フェーズ?」として展開しており、新卒一括採用、終身雇用、年功序列がセットで括られる日本型雇用の課題の見直しについても議論している。もっとも、日本型雇用が機能していないということではなく、さまざまな雇用形態の長所をうまく組み合わせ、社員がスキルを磨き、かつ安定的に仕事をできるように再設計していきたい。後者の賃金に関しては、20年にわたる低成長の中、引き上げを控えてきたと企業は認識している。そこで、社員の働きに報いようという思いは経営者に強く、賃金引き上げを選択肢の一つとして打ち出すのは当然である。

 

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