脳・心臓疾患の労災認定件数の減少傾向続く

 2022年6月24日、厚労省は「令和3年度の過労死等の労災補償状況」のデータを公表しました。これによると、新規申請数は脳・心臓疾患753件、精神疾患2346件で、認定件数は脳・心臓疾患172件(認定率32.8%)、精神疾患629件(認定率32.2%)となっています。

〔出所〕脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況(2021年度)

 脳・心臓疾患の労災認定件数は低下傾向が続いており、約15年前に比べて約2分の1、約5年前と比べても3分の2となっています。これは、過労死が減少しているわけではなく、厚労省の通達等により労働時間の認定が厳しくなっていることが原因と考えられます。

 他方、昨年9月の脳・心臓疾患の労災認定基準の改定により、労働時間だけでは月80時間に達していなくても、それ以外の負荷要因とあわせて総合評価されることになったことが影響してか、時間外労働時間が「60時間以上80時間未満」の認定件数が増えていることが注目されます(前年の17件から29件に増加)。認定基準の改定の影響は、令和3年度の後半以降に表われると考えられることから、来年度にどの程度増加するかが重要です。

この記事を書いた人

岩城穣

1988年登録の弁護士です。