新人社員自殺はパワハラ 7200万円支払い命令  福井地裁

2014年11月28日 共同通信配信

新人社員自殺はパワハラ 7200万円支払い命令  福井地裁

 福井市の消火器販売会社「暁産業」に入社後、1年もたたずに男性=当時(19)=が自殺したのは上司のパワーハラスメントが原因だとして、男性の父親が会社と当時の司に計約1億1千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福井地裁は28日、「上司が人格否定を繰り返した」とし、計約7200万円の支払いを命じた。

 原告代理人によると、未成年へのパワハラ訴訟で、自殺との因果関係が認定されるのは全国初。原告代理人は「社会経験も十分でない新入社員を指導する上司のパワハラを認定した意義は大きい」と判決を評価した。

 判決理由で樋口英明(ひぐち・ひであき)裁判官は「人格を否定する言動を繰り返し、精神障害を発症させた」と指摘。「発言は指導の域を超えており、典型的なパワハラだ」と断じた。

 原告代理人は裁判所が、上司による「うそを平気でつく」「死ねばいい」などの具体的な発言を列挙したことに触れ「今後、同様の発言があればパワハラに当たるという指 標になるのでは」と話した。

 男性の父親は「当然の結果だと思います」とのコメントを出した。

 暁産業は「担当者不在でコメントできない」としている。

 男性は自身の手帳に上司の発言を記録しており、2012年7月、福井労働基準監督 署が自殺の原因はパワハラと労災認定していた。

 判決によると、男性は高校卒業後の10年4月、正社員として入社。仕事の失敗が多いことを理由に、上司から「会社をやめろ」などの言動を繰り返し受けたことでうつ状態となり、同12月に自宅で首をつり自殺した。

「判決、当然の結果」
 自殺男性の父コメント

 福井市の消火器販売会社のパワーハラスメントをめぐる訴訟で、自殺した男性の父親が28日、コメントを発表した。内容は次の通り。

 会社の代表者や当事者は全く謝りません。(パワハラを認めた)判決は、当然の結果だと思っています。

 息子は19歳で旅立ちました。希望にあふれ、高校を卒業した年の12月の出来事で した。息子の死に顔には、険しい眉の跡だけが残りました。このような思いをするのは、私どもだけで十分です。

 息子が亡くなってすぐに、会社は求人募集をしていました。福井は全国でも住みよい ところと言われていますが、こうした企業が他にもあるかもしれません。より良い故郷になるよう願っています。

記録残す重要性示す

 労働問題に詳しい森岡孝二関西大名誉教授の話 入社して間もない青年へのパワハラを認めた画期的な判決だ。裁判所が上司の文言を具体的に挙げて認定したのも新しいケ ースだろう。客観的な証明が難しいと言われる中で、記録を残すことの重要性を示したと言える。近年、若年層でパワハラ自殺や過労死が増加しており、今後、同様の訴訟に与える影響は大きいはずだ。

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