日本IBM元社員5人の解雇は「無効」 東京地裁で判決

朝日DIGITAL  2016年3月28日
http://www.asahi.com/articles/ASJ3X4JXBJ3XUTIL026.html
 
 日本IBM(東京都中央区)の社員5人が「業績不良」を理由に解雇されたのは違法だと訴えた訴訟で、東京地裁は28日、5人全員の解雇を無効とする判決を言い渡した。吉田徹裁判長は「解雇権の乱用だ」と述べ、解雇後の給与の支払いも命じた。

 同社では2012年以降、業績不良を理由とする解雇が相次ぎ、弁護団によると、他にも6人が同地裁で争っている。今回の5人は43〜59歳で、営業やシステム運用の業務をしてきた。弁護団は「名目は個々人の業績不良だが、実質は会社のリストラだった。『解雇は自由だ』とする米国流の手法に、歯止めをかける判決だ」と評価した。

 判決は、5人に一定の業績不良や問題行動があったと認める一方、「適性のある業種に配転したり、解雇の可能性を伝えて業績改善の機会を与えたりせずに解雇した」と指摘。同社が根拠とした評価方式については「あくまで相対評価で、低評価が続いても、解雇に足る業績不良と認められるわけではない」と述べ、解雇は無効だと結論づけた。

 日本IBMは「主張が認められず誠に遺憾。判決を精査し、今後の対応を検討する」との談話を出した。(千葉雄高)

■「解雇自由にする流れにくさびを」

 日本IBMは12年以降、上司がこんな書面を読み上げ、突然、その日をもって原告らの出社を禁止した。「貴殿を解雇する。業績が低い状態が続いており、様々な改善機会を提供したが改善はなされず、もはや放っておくことはできない」

 ログイン前の続き原告側によると、こうして解雇を通告された社員は約50人いる。

 日本IBMは社員を5段階で評価。低い方の二つの段階には社員の5〜15%が入っていた。同社は、評価が2年連続で低い二つの段階だったことなどから、業績不良としていた。しかし判決は、原告らが長期間雇用され、配置転換された経験があり、比較的高い評価だった時期もあることなどを理由に、解雇は無効だと判断した。

 「相対評価が低くても解雇理由にならないことが、能力主義の会社でも明確にされた」。原告側の代理人弁護士はこの日の判決の意義をこう強調した。

 これまでの裁判例でも、長期雇用で働く人の場合、業績が平均的な水準に達しないという理由での解雇は無効とされてきた。新卒採用でずっと同じ会社で働く人の利益を考慮してきたためだ。今回の判決も、そうした日本の雇用慣行を踏まえた。

 第2次安倍政権では、解雇ルールの緩和を目指す動きが目立つ。産業競争力会議で経済界の代表が解雇自由化を主張したり、解雇ルールを緩めた特区構想が提案されたりした。いまは、裁判で解雇が不当とされた働き手に会社がお金を払って退職させる「金銭解決制度」の導入が検討されている。原告を支援する労働組合幹部は「業績が悪い社員は解雇できる流れが作られようとしている。解雇を自由にする流れにくさびを打ちたい」と話した。(北川慧一)

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