第5回つどい マクドナルドだけじゃない!不払い残業の実態を告発する

働き方ネット大阪第5回つどい
「マクドナルドだけじゃない!不払い残業の実態を告発する」に100名の参加者

弁護士 原 野 早知子

2008年4月10日夕刻、働き方ネット大阪の第5回つどいがエルおおさか南ホールで開催された。今回は、マクドナルド「偽装管理監督者」判決を受けての緊急企画である。雨の中、約100名の参加者があり、新聞・テレビの取材もあった。不払い残業問題、長時間労働問題への社会的関心の高さがうかがわれた。

第1部は関西大学森岡孝二教授の「労働時間のコンプライアンス実態とサービス残業」と題した基調講演。森岡教授は、「日本の企業犯罪で被害人口・被害総額トップが『賃金不払残業』だ」と指摘した。そして、サービス残業に対する労働基準監督行政が近時強化される一方で、財界がその基準強化を免れるため、ホワイトカラーエグゼンプションの導入を求めている動きや、同時期に派遣労働者が急増し、正社員との格差が拡大している事実に注意しなければならないと話された。

第2部は河村学弁護士が残業代をめぐる判例の状況、特に、マクドナルド事件で問題となった「管理監督者」の基準について解説した。労基法上、残業代の支払いをしなくてよい「管理監督者」とは、経営者と一体的な立場にあるような者で、出退勤について自由裁量があり、賃金・手当などで高い地位にふさわしい待遇をうけている者である。現在の日本社会で「管理職だから残業はない」と言われている労働者の中で、この基準に真にあてはまる人はほとんどいないだろう。河村弁護士が担当する武富士の訴訟では、武富士は「原告は管理監督者だ」と言い、一方で、「賃金に残業代が含まれている」と主張。河村弁護士が「矛盾している」と反論すると、「管理監督者の主張は引っ込める」と言ってきたという。我が国の労働者をしばる「管理職に残業代はない」というテーゼはかくもいいかげんなものなのである。

続く第3部は、ハイライト―現場からの告発である。

実際に「名ばかり管理職」だったミドリ電化の木村茂さん。「社員勤務ローテーション表」には、しっかり始業・終業時間のシフトが日々規定され、およそ「出退勤の自由裁量」などない。手帳に始業・終業の時間をつけてみたところ、毎日12時間以上の労働であることが明らかになり、労基署に申告。このことがきっかけになり、ミドリ電化は3400人の労働者に合計37億円の残業代をさかのぼって支払った。

夫があまりの長時間労働で、心配のあまり労働基準オンブズマンに相談し、告発をした妻のMさん。Mさんは自分が行動する前に、夫に法律上の手続を取ることを勧めたが、夫は「周りの人に迷惑をかけられない」と応じなかった。Mさんが匿名で告発をした結果、夫の働く日本ペイントは8か月分の未払い残業代を支払い、異常な長時間労働も改善された。しかし、それでも夫が帰宅できるのは早くて午後9時という話には驚かされた。

建交労関西支部の役員法月健二さんは、大阪市西淀川区の運送会社での「偽装個人請負」の不払い残業問題を告発。この会社では、運転手の就労実態は労働者であるのに、「個人事業主」とされ、毎月支払われる金額は最低賃金を下回るほどの低額で、不足分を会社が貸し付けて、翌月の支払日に差し引くという取扱が常態化していた(働いても働いても貯金は出来ず、逆に借金がたまっていく)。「労働者」であれば、最低賃金違反も借金天引きも違法だが、「個人事業主」として法の網の目をくぐろうとしていたのである。労組を結成し、労基署へ申告した結果、運転手らが「労働者」であると労基署が認定し、会社に是正勧告を出したが、会社はこれに応じず、不払い残業代を払うどころか、組合員の賃金をカットするという嫌がらせに出ているという。まさに労働者を奴隷化する実態であった。

パネリストのリレートークに加えて、会場からも実態告発が相次いだ。

10ヶ月で860時間残業したという調理師の八石さんは、働き始めて3〜4か月で過労で倒れ、医者に行くと「うつでこのままだと死ぬ」と言われたが、なかなか職場をやめることもできなかった。22歳の八石さんは、今、「職場の仲間を放っておくことはできない」との思いで、労働組合に加入し、会社との交渉を続けている。Tシャツのプリント会社で働いていた前田さんは1ヶ月に230時間以上残業し、毎日朝の3時、4時まで働いていた。周囲では、精神疾患になる人、アルコール依存症になる人、自殺する人が出て、自身も十二指腸潰瘍になって退職したという。

信じがたいほどの話ばかりだが、これが今の日本の生の労働実態である。このような労働実態を放置して良いと正面から言える人はいないだろうし、このように命と健康をすり減らした重労働のもとで、安全に仕事ができ、また、いい仕事ができているのかも極めて疑問である。

つどいは集会アピールを採択して終わったが、不払い残業と長時間労働への取組は、非正規雇用問題と並び、現代の労働運動のまさにメインの課題であることを痛感した。今後、実態を告発し、労働監督行政の強化、労働時間規制の強化を求める運動がますます求められていると思う。その中で、八石さんのような若い人が運動に立ち上がり始めていることが印象に残った。

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