トラックドライバーを魅力的な職業に 人材不足が深刻化

物流Weekly 2014.08.04 

 大手外食チェーン店の「すき家」で、時給1500円という一昔前では考えられない高条件で求人が出されていた。外食チェーンでのアルバイトは、比較的自分の好きなように時間帯を決めることができるが、それでも人が集まらない。一方、肉体労働で時間が拘束されがちなトラックドライバーも不利な労働環境に置かれているといえる。外食チェーンのアルバイトとトラックドライバーの給与などを比較し、運送業界が抱える人材不足に焦点を当ててみた。

 少子高齢化に伴う働き手の減少に加え、アベノミクス効果から企業側がアルバイトを争奪することも、トラック運送業の人材不足に少なからず影響している。

 トラック運送業では、正社員ドライバーよりも、軽の委託ドライバーの方が収入面で勝るというケースもあるという。社員のドライバーは長時間働かされるが、委託のドライバーは基本的に二つ三つと掛け持ちが可能なため、手取り収入で勝るケースがある。社員のドライバーが給与面で報われていないということは、ドライバーという職業に求職者が魅力を感じない原因の一つかもしれない。

 外食チェーン店では、人材不足で一時休業や短縮営業に追い込まれた。一説によると「メニューの多様化で仕事量が増加し、大量退職につながった」という話がある。

 運送業界でも、トラックで荷物を運ぶという作業に加え、フォークリフトでの荷下ろしや梱包などをドライバーが担当することになり、負担が増えているため人が集まらないと指摘する声もある。長時間労働など労働条件が厳しい業種は敬遠されがちだ。特に若い世代は「給与はほどほど、休みが多い」仕事を求める傾向にある。

 復興需要やオリンピックの開催、公共事業の増加で建設業でも人手が足りないのが現状。運送業界でも消費増税前のかけ込み需要で配送の依頼が増え、一時的に運賃上昇が見られたが、「5月からはめっきり仕事が減った」と嘆く事業者が多い。

 では実際に、外食チェーンのアルバイトやトラックドライバーは、どれだけの給与をもらっているのだろうか。「すき家」のアルバイトの給与は、大阪市内で時給880円から1250円(最低賃金819円、厚生労働省HP参照)。東京都内で時給950円から1625円(同869円)だった。

 一方、ドライバーの給与をハローワークインターネットサービスで調べてみると、例えば東京の大手運送会社で、正社員ドライバーが総額28万円程度(作業給・業績給あり)。大阪のある7トンドライバーは基本給(月額平均)または時間額で30万円から35万円。歩合給有りで、仕事内容は「配送以外に積み込み・荷下ろしもあり。重量物はフォークリフトで積み、ケースや紙袋などはリフトと手積み」となっていた。

 運送業界では歩合給を採り入れている事業者が多いため、時間給に換算することは難しい。しかし長時間拘束され、「時間外手当」をきちんともらうことなく、決して高いとは言えない給与で多くのドライバーが働いている。

 給与が厳しい場合でも、トラックが好きで乗りたいという人は、今の時代でもいるはずだ。ただ、今ではドライバーにも、あいさつなど人と関わることが求められるため、人と話すことが苦手な人には運送業界自体に魅力がなくなっているのかもしれない。

 あるアパレル会社では、非正規従業員の約半数を地域正社員にしたり、外食チェーンではアルバイトにも年2回賞与を支給したりと、他の業種では労働環境の改善に積極的に取り組む姿勢が見られる。運送事業者も給与以外にも賞与などさまざまな面で、ドライバーを支援する制度の充実が求められる。

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