チョイフルニュース 公取委がヤマダ電機に排除命令

ヤマダ電機に排除命令 16万人の派遣費払わず/公取委認定

2008/ 07/ 01東京読売新聞 朝刊

 ◆「立ち入り後も違反状態」 
 家電量販店最大手・ヤマダ電機(前橋市)が納入業者から不当に従業員の派遣を受けていたとされる問題で、公正取引委員会は30日、同社の優越的地位の乱用を認定、独占禁止法違反(不公正な取引方法)で排除措置命令を出した。同社は、昨年5月に公取委の立ち入り検査を受けるまで派遣費用を負担していなかった。検査後、日当などを負担するようになったが、公取委は「額が不十分で違反状態が続いている」とした。優越的地位の乱用で、家電量販店が行政処分を受けるのは初めて。

 公取委によると、ヤマダ電機は2005年11月から昨年5月まで、延べ361店舗の開店や改装のため、計約250社から延べ約16万6000人の従業員を派遣させ、人件費などを支払わないまま商品の陳列や補充、接客などをさせた。

 また、05年11月から昨年11月ごろまで、店内で展示したり、返品されたりした商品を処分するセールでも、人件費などを負担せずに、パソコンやデジカメの納入業者に商品のクリーニングなどをさせた。

 同社は立ち入り検査後、派遣された従業員1人につき5000円の日当や700円の弁当代を負担するようになったが、公取委は、交通費や宿泊費なども負担すべきだと指摘した。

 優越的地位の乱用の規制対象は05年11月の告示施行までは百貨店やスーパーなどに限られていたが、施行後は、家電量販店などに拡大。ヤマダ電機の売上高は、業界で初めて1兆円を突破、昨年度は約1兆7300億円に上り、トップの摘発を通じて競争が激しい家電量販業界の取引の適正化を促した形だ。

 ヤマダ電機の話「排除命令を真摯(しんし)に受け止め、コンプライアンス(法令順守)体制の強化に努める」

 ◆「まるで店員みたいだった」 
 「すっかり動員がかからなくなった」。ヤマダ電機から開店時の応援要請を受けてきた中堅メーカーの担当者は、最近の変化についてこう語る。

 これまで新規開店のたびに「人を出して」と求められ、メーカーの販売促進担当の社員を派遣。社員は他社の商品まで販売させられてきたという。「まるでヤマダ電機の店員のようだった。だが、法令順守は時代の要請。違法なことは、もうできないでしょう」と話す。

 公取委による今回の排除措置命令とは別に、ヤマダ電機を含む家電量販店では、メーカーが人材派遣会社などと契約して確保した「ヘルパー」と呼ばれる派遣労働者の問題も浮上。雇用関係のない量販店側の一方的な意向で「ヘルパー」が職を失うなど、労働法上の問題も指摘された。

 大手メーカーの担当者は、「ルールを守らなければ消費者の信頼は得られず、業界の発展もない」と話す。だが、現在でもヘルパーらが自社とは無関係な商品の販売を命じられたりするケースもあるという。
 
 〈優越的地位の乱用〉
 独禁法が規制する「不公正な取引方法」の一つで、大規模小売業者が正当な理由なしに立場が劣る納入業者に商品を返品したり、値引きを求めたり、従業員を派遣させたりする行為。公取委は告示や運用基準で、違反行為を例示している。

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