森友文書 書き換え数十カ所 昭恵氏の名削除…問題発覚後

毎日新聞2018年3月12日

https://mainichi.jp/articles/20180312/k00/00e/010/198000c

  学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決済文書の書き換えについて西村康稔官房副長官から説明を受けた後、記者団の質問に答える自民党の森山裕国対委員長=国会内で2018年3月12日午前10時32分、川田雅浩撮影

学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書を巡る疑惑で、財務省は12日午前、文書に書き換えがあったことを認める調査結果を自民、公明両党に報告した。書き換えは決裁に関連する14件の文書で数十カ所に上り、書き換えの時期は昨年2月から4月という。また書き換え前の文書には、森友学園の籠池泰典前理事長の発言として安倍晋三首相の妻昭恵氏に関する記述があり、書き換えの際に削除されていた。与党幹部が明らかにした。

自民党の森山裕国対委員長は12日午前、国会内で記者団に対し、西村康稔官房副長官から「決裁文書に書き換えがあった」と報告を受けたと語った。財務省は12日午後の参院予算委員会理事懇談会と衆院財務金融委理事懇にそれぞれ調査結果を報告する。

書き換えがあったのは、2015年から16年に同省近畿財務局が作成した決裁文書やそれに付随する14件の文書。決裁当時の文書には「本件の特殊性」などの記述があった。しかし問題が発覚した17年2月以降、国会議員らに開示された文書では、それらの記述が削除されるなどしていた。書き換えの期間は森友問題が国会で浮上し、野党が追及を始めた時期と一致する。

また、昭恵氏以外に複数の政治家の名前も削除されていた。書き換えは理財局が主導し、同局や財務省近畿財務局の複数の職員が関与したとみられる。書き換え前の文書などは大阪地検が保管しており、財務省は地検に要請して写しの提供を受けた。

また政府関係者は、文書を国会へ提出した当時の財務省理財局長、佐川宣寿前国税庁長官について「書き換えを指示したのだろう」と語った。ただ同省は今回の報告で、誰が指示したかについては「調査中」とするにとどめた。

森友問題では、学園への国有地売却価格が大幅値引きされた経緯などが問題視された。佐川氏は昨年の国会で「事前の価格交渉はなかった」「交渉記録は破棄した」などと繰り返し答弁し、手続きに問題はなかったと強調していた。

だが佐川氏は「国会審議の混乱を招いた」などとして、今月9日に辞任。麻生太郎副総理兼財務相は佐川氏を懲戒処分とした。書き換え後の文書は佐川氏の答弁に沿う形になっており、麻生氏は財務省の調査や地検の捜査の結果次第で、佐川氏に追加処分を行う意向を示している。

決裁文書の書き換えは、朝日新聞が2日に報道。財務省は当初、「地検が捜査中」として書き換え前の文書が存在するかを明らかにしなかった。しかし野党だけでなく与党からも事実関係を明らかにするよう求める声が強まり、省内調査を実施していた。

決裁された公文書がミス以外で書き換えられたのは極めて異例。疑惑が裏付けられたことで、公文書の信頼性を揺るがしかねない深刻な事態となり、財務省にとどまらず、安倍首相や麻生氏の責任を問う声がさらに強まるのは必至だ。

【工藤昭久、村尾哲】

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