変形労働時間制で過労死増える 遺族の工藤祥子氏に聞く (10/9)

変形労働時間制で過労死増える 遺族の工藤祥子氏に聞く
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教育新聞 2019年10月9日

変形労働時間制が導入されれば、教員の過労死が増える――。10月8日、「給特法のこれからを考える有志の会」が都内で緊急集会を開き、臨時国会で提出される給特法改正案に盛り込まれる予定の変形労働時間制の導入について、見送りを求めた。現職教員の斉藤ひでみ氏(仮名)と共に、国会議員や記者らの前に立ったのは、2007年に中学校の体育教員だった夫を過労死で亡くした工藤祥子氏だった。過労死遺族に、今の学校の働き方改革はどう映っているのか。工藤氏にインタビューした。

変形労働時間制で過労死が増える
――中教審の学校の働き方改革の答申について、どのような評価をしているか。
私は「全国過労死を考える家族の会」で公務災害を担当している。答申では、第1章で「志ある教師の過労死等の事態は決してあってはならない」とうたっている。これは私がずっと訴え続けてきたことであり、教員の過労死をなくすことが答申で明確に示されたことは評価している。

〔写真〕過労死遺族として変形労働時間制の導入に警鐘を鳴らす工藤氏

一方で、答申の内容が学校現場にもたらされると、大きな矛盾が生じることも事実だ。例えば部活動は、答申に添うならば、短い時間で効率よくやることが本来評価されるはずだが、実際には、時間を掛けて練習をすることが是とされる雰囲気がある。
また、業務量を減らさないまま早く退勤させようとして、持ち帰り仕事が増えているとすれば、それは時短ハラスメントに他ならない。働き方改革が学校現場で本当にできるのかが問われている。

――そんな中で変形労働時間制が導入されようとしているが、どのような影響が考えられるか。
過労死した夫は体調の異変を自覚していたが、部活動や学校行事で忙しく、夏休みになったら病院に行くつもりでいたら6月に倒れた。実際の公務災害の事例を見ても、学校の教員が亡くなるのは5〜6月が多い。変形労働時間制の狙いは夏休みのまとめ取りだが、そのために1学期の勤務時間が長くなれば、過労死や過労で倒れる教員は増えるのではないか。
もう一つ懸念されるのは、勤務の就業時刻から次の始業時刻までの間に、一定時間の休息を設ける勤務間インターバルの問題だ。教員は朝早くに学校に行く。変形労働時間制で退勤時間が遅くなれば、それだけ勤務間インターバルは短くなるため、しっかり休息し体調を回復させることが難しくなる。教員の仕事を鑑みると、できれば12時間は勤務間インターバルを設けることが理想だ。
また、変形労働時間制は家族と過ごす時間にも影響する。私自身も教員だったときは、午後8時すぎまで学校に残っていることが多く、小学生だった娘から「夕飯一緒に食べられないの?」と電話があり、心苦しさを味わった経験が何度もある。
もし1時間でも勤務時間が合法的に延びれば、早く帰りたくても帰れない、帰りにくい雰囲気が職場に生まれるのではないか。
答申では、変形労働時間制を導入する場合には、子育てや介護を抱えている教員には配慮することが明記されている。しかし、実際の制度運用でこれらが本当に保証されるのか、しっかり担保してほしい。

学校の働き方改革に敵も味方もない
――変形労働時間制の導入に反対する署名活動も、斉藤氏と共に取り組んできた。改めて、国に訴えたいことは。
今、学校現場は余裕を失っている。人を育てる現場で、これ以上、疲弊する教員の姿を子供たちに見せるわけにはいかない。教員が生きることを楽しみ、創造力を発揮できるように、学校をブラックにしないように、しっかりとそれに見合うコストを掛けなければ大変なことになる。
この問題に関して敵も味方もないと思っている。過労死等防止対策推進法が成立したときもそうだったが、超党派で取り組んでほしい。
また、文科省も本気で頑張っていると感じている。ただ、もっと学校に寄り添って、現場に下りてきて、きちんと説明すべきだ。
教員と子供が学校現場の主役だ。未来を担う彼らのために、社会全体の問題として議論してほしい。
――学校現場にメッセージを。
まず、過労死ラインは上限の目安ではない。過労死ラインを超えて働き続けることは、いつ倒れてもおかしくないということを意味している。長時間労働だけでなく、睡眠不足やストレスなど、さまざまな要因が人の精神状態に影響を与える。だから、少しでも異変に気付いたら、休む勇気を持ってほしい。
職場の雰囲気も重要だ。周囲で声を掛け合ったり、相談に乗りやすい環境をつくったりしなければ、孤立してしまう。私の夫も、新しい学校で責任のある仕事を任され、手伝いを求めにくい状況だった。
ほとんどの教員は普段から自分自身の勤務時間を意識しているとは言えない。「もしも職場に変形労働時間制が導入されたら、自分たちの働き方はどうなるのか」と、想像力を働かせてほしい。そして少しでも疑問に感じたら、声を上げてほしい。 

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