「徴用工」問題解決に向けて日韓の法律家団体が共同声明 (12/26)

「徴用工」問題解決に向けて日韓の法律家団体が共同声明
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渡部睦美|2019年12月26日4:15PM 週刊金曜日オンライン

〔写真〕日本側の会見。左から吉田氏、川上氏、在間氏、内田氏、海渡氏。(撮影/渡部睦美)

韓国の大法院(最高裁に相当)が昨年10月30日、新日鐵住金(現在の日本製鉄)に対して元「徴用工」への賠償を命じる判決をくだしてから1年以上が経った。だが、いまだ賠償金は支払われず、解決に向けた動きがない中で日韓関係も悪化している。この状況を案じ、日韓の主だった法律家団体が11月20日に共同声明を発表した。

声明は「強制動員問題に関する日韓法律家による共同宣言」と題するもの。日韓双方が東京都内、韓国・ソウル市内でそれぞれ会見を開き発表した。日本側は自由法曹団、民主法律協会、「徴用工問題の解決をめざす日本法律家有志の会(日本有志の会)」など7団体、韓国側は「民主社会のための弁護士会(民弁)」、人権法学会など6団体が呼びかけ団体となった。日本側はこのほか124の弁護士、研究者、団体がこの声明に賛同している(11月20日時点)。

日本側の会見によると、今年9月に韓国の弁護士から日本の弁護士に対して、法律家として昨年の大法院判決以降の日韓問題について共同の意思表示をする必要があるのではないか、との提案があったことが声明のきっかけという。韓国側が文言を起案し、双方が1〜2回ソウルと東京を行き来して文言を詰めた。大法院判決以降、日韓双方でさまざまな声明が発表され、その流れの中で出てきた取り組みでもあるという。

【個人請求権は消滅せず】

声明は、「徴用工」問題は「専ら政治的・外交的問題として取り上げられてい」るが、本質的には「重大な人権侵害を受けた被害者」の「人権回復の問題」だと強調。問題を解決するための見解として、1965年の日韓請求権協定で、個人の賠償請求権が消滅したわけではないという点を挙げた。「日本有志の会」の川上詩朗弁護士は、この点について、「日韓の政府も裁判所も基本的に(見解に)違いがない。そこがクリアな形で伝わりきっていない」「(安倍政権が大法院判決を)国際法違反と言うのは違う」と話した。在間秀和弁護士は「これは日本が正面から向きあってこなかった戦争責任の問題。被害者の救済が必要」とした。

声明はまた、韓国大法院判決は適正な訴訟手続を経たものであり、日本企業は判決を受け入れなければならず、日本政府は日本企業による判決の受け入れを妨害してはならないとした。これについて吉田健一弁護士は「日本の裁判所でも過酷な労働や人権侵害の実態が認定されていて、韓国の大法院でもそういう事実があったということを前提として認定した上で、判決が出された」とし、川上弁護士は「日本の裁判所も強制連行、強制労働を認めているのに、日本政府、企業はそれを認めていない」ことが問題であると述べた。

声明は最後に、強制動員被害者の名誉と権利回復のために、(1)ドイツで強制動員被害者に対して政府と企業が共同で「記憶・責任・未来」基金を設立した例、(2)中国人強制連行・強制労働事件における日本企業(鹿島建設、西松建設、三菱マテリアルなど)と被害者との和解に基づく基金による解決の例――を挙げ、「必要かつ可能な措置を迅速に図る」よう日韓両国政府と日本企業に求めた。

海渡雄一弁護士は、中国人の賠償請求訴訟では2007年に日本の最高裁が「関係者において、被害の救済に向けた努力が期待される」と付言していたことを指摘。これらの訴訟で中国人側の代理人を務め、3件の和解に関わった内田雅敏弁護士は「特に三菱マテリアルとの和解では、日本政府は少なくとも反対はしなかった。それが韓国との問題でできないのは、戦争責任、植民地支配の問題を解決できていないからではないか」「日本のメディアも当時、概ね中国の和解を歓迎したが、同じことをなぜ韓国の『徴用工』問題で言えないのか疑問」とした。

現地報道によると、韓国側の会見では「民弁」の金鎬会長が「日本政府は、法と良心に基づく韓日の法律家の声に耳を傾け、人権を蹂躙された被害者の名誉を回復し、東北アジア、世界平和のために行動すべき」と呼びかけた。

(渡部睦美・編集部、2019年12月6日号)

 

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