1月6日、会社を辞めたい人が退職代行に殺到。新年に辞める胸中とは (1/4)

1月6日、会社を辞めたい人が退職代行に殺到。新年に辞める胸中とは
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SPA! 2020年1月4日 08:54

1月6日、会社を辞めたい人が退職代行に殺到。新年に辞める胸中とは
―[“退職請負人”嵩原弁護士の「労働問題駆け込み寺」]―

◆会社員から自衛官、キャバ嬢まで。10分単位で予約がびっしり

 人手不足による長時間労働や理不尽なパワハラが横行。さらには辞表を出した途端に嫌がらせをされる「慰留ハラスメント」という新語すら生まれる昨今。劣悪な労働環境に悩む者は多いが、そんな人たちに一筋の光を照らしてくれるサービス――「退職代行」が話題となって久しい。

 そしてその勢いは2020年もとどまることがないようだ。

「仕事はじめとなる1月6日の予約が殺到しており、ほぼ満杯。弁護士を増員して対応する予定です。特に『新年始業の8時〜9時台に連絡してほしい』という依頼が多いですね。『新年には生まれ変わりたい!』ということでしょうか。10分単位で予約が埋まっている状況です」

 そう語るのは、これまで2000件以上の退職代行案件に携わってきた弁護士の嵩原安三郎氏だ。

◆給料の「手渡し代行サービス」も登場

「相談に来るのはサラリーマンだけではありません。議員秘書からクリエイター、水商売の方まで、ありとあらゆる職業の人が『なんとかして辞めたい』と悩んでいる。最近特に目立つのは、公務員や自衛隊の方からの相談依頼ですね。自衛隊員には自衛隊法というものがあるので、民法の退職が適応されない。
また、普通のサラリーマンであっても会社との交渉内容は多い。非弁(弁護士資格を持っていない)の退職代行業者では対応しきれないことも多いと思います」

退職代行と聞くと、単に「辞めたい」という意思を本人に代わって会社に告げるだけ――と思われがちだ。しかし、実情は異なる。残業代や退職金の請求、さらに借入金の返済交渉や社宅の明け渡しまでが業務の範疇に渡っているという。

「キャバクラなどのナイトワークの場合は、いまだに給与が手渡しという店も多い。しかし辞めてから給与を取りに行きたきたくない、顔なんて合わせたくない……という人に向けた『手渡し代行』など、ニーズが多様化している。依頼者の事情を踏まえた対応が求められるようになりました」(嵩原氏)

◆「宴会芸強要が辛い」新年会を理由にする人も続出

 ここで年明けの退職代行を依頼したばかりのSEの山岸英一郎さん(30代前半、和歌山県在住)のケースを紹介しよう。

「パワハラ気質の職場についていけず、もはや限界です。1月6日の仕事はじめと同時に退職届けを出すために、依頼しました」

 山岸さんは声をひそめる。

「漫然と辞めたいと思っていたのですが、決定打となったのは忘年会です。上司は若手にカラオケや余興を強要するし、断わると『協調性がない』『お前ら世代は意味がわからない』と罵倒される。女性社員はお酌を強制させられてコンパニオン状態です。
酔っ払った上司の武勇伝を延々と聞かされるのもしんどいし、『それに比べてお前は……』とディスられるコンボがつらすぎる。二次会では新入社員が激辛ラーメンの一気食いをさせられている現場も目撃しました」

◆「働き方改革」だけでなく、「辞め方」も改革すべし

 一年の労をねぎらうはずが、精神的な負荷が余計にかかる結果に。「忘年会は時間のムダ以外の何物でもなかった」と山岸さんはうなだれる。

「ネットでは『忘年会スルー』なんて言葉も話題になっていましたが、とんでもない。中には嬉々として上層部にお酌している同僚もいるんです。だから僕だけが『欠席します』なんて気まずくて言えません。

 そんな職場ですから、『辞めます』なんて言った日には、どんな顔をされるのか……新年会のことを考えただけで憂うつになってしまった。それで退職代行にお願いすることに決めて、心がだいぶ晴れました」

 前出の嵩原弁護士は次のように語る。

「宴会への参加を強制することや、芸を強要することは立派なパワハラです。よく上司が『今日は無礼講!』というのを聞きますが、『無礼講』と言えばパワハラ・セクハラが許されるわけではありません。

 自分の体を壊してしまうほど、大事な仕事や職場なんて世の中にはありません。ときには逃げてもいい。そんなときのひとつの策として、退職代行を覚えておいてほしいですね。私達が入ることで会社からの連絡は止むし、これまでの成功率は100%。これは僕の腕……と言いたいところだけど、法律上当然の権利だから(笑)。働き方だけでなく、辞め方にも改革を。知識は邪魔になりません」

 昨年4月に「働き方改革関連法案」が改正されてから、半年以上が経過した。労働環境の見直しへの機運が高まる今、「辞め方」への意識も確実に変わろうとしているのだ。

【フォーゲル綜合法律事務所】
嵩原安三郎氏 ’70年沖縄県生まれ。京都大学卒業後、’99年に弁護士登録。情報商材や副業詐欺など悪徳商法案件を数多く手がけるスペシャリスト。フォーゲル綜合法律事務所所属。

取材・文/アケミン
―[“退職請負人”嵩原弁護士の「労働問題駆け込み寺」]―

 

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