第106回 民間給与 男性は12年間で77万円、1年間で33万円もダウン

このほど、国税庁の2009年分「民間給与実態統計調査結果」が発表されました。それによれば、09年に民間の事業所に1年を通じて勤務した給与所得者は4,506万人、その平均給与(給料・手当+賞与)は405万9000円でした。これをピークだった97年の467万3000円と比べると、61万4000円も減少したことになります。なかでも下落が大きい09年は、単年で23万7000円ものマイナスになっています。

 平均給与の過去の動きを性別にみると、男性の給与の下落が大きいだろうことは容易に察しがつきます。実際にそのとおりで、男性はピークの97年から09年の12年間に、577万円から499万7000円へ、77万3000円ものマイナスになっています。女性は同じ期間に、278万9千円から263万1000円へ、15万8000円の下落に留まっています。09年の1年間で見ても、男性は32万8000円の下落であるのに対して、女性は4分の1の7万9000円の下落ですんでいます 。

09年については、これは、男女を問わず給与のうち時間外給与(残業代)と賞与(ボーナス)の減少が特別に大きいことと、男性に比べて女性はパートタイム比率が高く、残業時間が短く、賞与が少なく、賃金水準が低いことが影響しています。

それにしても男性の賃金(給与)が12年間に77万円も下がり、そのうちわずか1年間に約33万円下がったことには驚かされます。男女を合わせた民間給与総額は201兆3177億円から192兆4742億円に、8兆8,435億円も減っています。これでは一国の需要の大半を占める個人消費が縮小するのは当然です。また不況が長引き容易に回復しそうにないのも当然です。

ここから賃上げの声が彷彿と拡がってよさそうなものですが、ネット上には、民間の給与がこれほど下がったのだから公務員の賃金をもっと下げるべきだという意見が目につきます。民間の賃金が下がれば公務員の賃金も下がる仕組みがあって、公務員の賃金も近年ではずいぶん下がってきました。それをさらに民間が下がったというので2割、3割下げたら、今度はまた民間の賃金を下げる圧力が強まり、悪循環が続くことになるでしょう。

公務員の平均給与はふつう正規職員について言われますが、先の民間給与は常用のパート・アルバイト労働者も含んでいます。また公務員の正職員は民間労働者に比べると勤続年数が長く平均年齢が高いので、単純比較はできません。そのあたりを無視しても、国家公務員の年間給与は、減少に転じる前の1998年から2009年までに、本庁勤務の係長で約12.8%、地方機関(地域手当非支給地)勤務の係長で約17.5%減少しています。年額では、今年度の人事院勧告が実施されると勧告前に比べて9万4000円(1.5%)のマイナスとなり、年間給与は02比で64万円の減少となります。

最近は、公務員の賃金を下げろ、人数を減らせという圧力が強まるなかで、大阪府下の自治体では非正規労働者が3割を超え、なかには5割を超えるようになっているところもあります。これも個人消費を押し下げ、地域経済を疲弊させるという悪循環をもたらしています。

こうした状況を打開するには、民間労働者と公務労働者が連帯し、また正規労働者と非正規労働者が連帯して、賃金と消費の底上げを求める声を拡げていくしかありません。

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