東京新聞【社説】新型コロナ 特措法の検討は慎重に (3/4)

【社説】新型コロナ 特措法の検討は慎重に
https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020030402000175.html
東京新聞 2020年3月4日

安倍晋三首相は、新型コロナウイルス対策に立法措置を表明した。事態悪化を想定した対応は重要だが、目指す法整備は政府などの権限を強めるものだ。必要な対応なのか慎重な検討が求められる。

 首相が唐突に表明したイベントの自粛や小中高校の一斉休校の要請に法的な強制力はない。

 そこに批判があったことも要因なのだろう。法整備を言い出している。感染症の封じ込めにはあらゆる対策を取りたいが、政府や自治体の権限強化は抑制的であるべきで十分な議論が要る。

 想定されているのは新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の改正である。今国会での早期の成立を目指している。

 特措法は、感染症拡大防止のため企業活動や国民生活を規制する法律で、二〇〇九年の新型インフルエンザの流行を機に検討が始まり一二年に成立した。鳥インフルエンザが発生し、深刻な被害を招く新型インフルエンザに変異して人から人への感染が懸念された一三年に施行された。

 特措法では重大な被害の恐れがある新型インフルエンザが国内で発生、急速なまん延の恐れがあると政府が判断した場合、緊急事態を宣言する。自治体はあらかじめ定めた計画に沿って対応する。

 懸念されるのは国民の私権を制限する権限が知事などにあることだ。不要不急の外出の自粛を要請できる。劇場、学校などの使用制限を管理者に要請し、従わなければ指示できる。集会や移動の自由が大きく制限されかねない。

 土地や建物を借りて臨時の医療施設を設置できるが、所有者の同意がなくても強制使用できる。

 新型インフルエンザ被害が深刻な場合、国内死亡者は十七万〜六十四万人と想定されている。それでも当時、日弁連などから規制は人権が侵害されかねないとの批判が出た。

 新型コロナウイルスもどんな被害を及ぼすのか不明な点は多い。だが、首相は一斉休校が必要だと判断した根拠を示していない。専門家の意見も聞いていなかった。独断で決める姿勢では「有事」を理由に過剰な制限を求められる不安は消えない。

 一斉休校の要請に際し文部科学省や厚生労働省との連携が不十分で学校や保育所、雇用などへの支援が後手に回っている。

 政府はまず政府内の連携を密にし、国民が自主的に判断できるよう正確な情報発信を心掛けるべきだ。現状でもすべきことはある。 


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