すかいらーくが未払い賃金支払い

~ブラック経営者の常套句「信頼関係の維持継続を目的」~

 2022年6月9日㈭朝日新聞朝刊は、すかいらーくが7月1日に、これまで切り捨ててきた5分未満の労働時間に相当する過去2年分の未払い賃金を支払うことを報じている。

 記事によると約9万人が対象で費用は16億円に上るという。

 同社は、パート、アルバイトの賃金の支払いを5分単位で行ってきた。今回の措置に伴い、1分単位で賃金を支払うとのことである。

 同社は朝日新聞の取材に文書でコメントし、「5分単位の勤怠管理自体が違法である認識はない」としている。そして、「1分単位の支払いに切り替えるうえで、アルバイトらとの『信頼関係の維持継続を目的』に支払いを決めた」としている。

そもそも、すかいらーく社の言う「5分単位の勤怠管理自体が違法である認識はない」という見解自体については、「5分単位の勤怠管理」だけでは「違法」「適法」は判断できない。今回、同社が問われているのは「未払い賃金」という「違法性」である。同社の勤怠管理の運用によって「未払い賃金」が生じたことによる違法性を問われている。厚生労働省担当者も「労働基準法上、端数の時間を切り捨てることは認められない。その分の賃金が支払われなければ違法となる可能性がある」としている

 つまり、同社は問われている未払い賃金の問題にコメントせずに、「勤怠管理」の問題にすり替えているのである。

 一般的に、違法経営をしてきた会社が、未払い賃金などの違法行為を指摘された際に、本質をすり替える。そして自らが行ってきたやり方について「違法という認識はない」と主張する。もともと、どんな制度にも違法性はない、と言える。しかし、違法な結果を生む制度はある。

 今回のケースの場合、5分単位の賃金の支払いを、すかいらーく社は行ってきた。すかいらーく社が、5分未満の労働時間を切り捨てずに5分単位に切り上げていれば適法である。未払い賃金が全くなければ問題なかったのである。

  また、これまで行ってきた「違法状態」を解消するために「過去2年」の未払いの賃金を支払うわけだが、未払いの賃金を発生させた責任を率直に認め、「違法状態の解消のために、未払い賃金を支払う。また、違法な状態を生じさせた勤怠管理を改め、1分単位の支払いに変更する」と説明するのが、責任を全うすることになるのではないだろうか。

 しかし、同社は「信頼関係の維持継続」の「目的」のために、未払い賃金の支払いを決めたとのことである。自らの違法な状態を生んだ責任を棚上げにし、「信頼関係の維持継続を目的」と言う。これも一般的に、違法経営をしてきた会社がそのブラックな体質を変えることなく、制度を変えるときに使う常套句である。

この記事を書いた人

伏見太郎