県立奈良病院産科医の「当直訴訟」が決着 宿日直を労働と認め、県に1500万円の支払い命じる

山崎大作=日経メディカル 2013/2/13
 
奈良県立奈良病院の産科医2人が宿日直勤務の時間外割増賃金などの支払いを求めた上告審で、最高裁判所は2月12日、上告不受理を決定した。これにより産科医の休日・夜間勤務を労働時間と認め、県に約1540万円の支払いを命じる判決が確定したことになる。

 これは2006年12月、県立奈良病院の産科医2人が宿日直や宅直のために病院や自宅にいた時間が勤務時間にあたるとして、県に対し、2004年から2005年の時間外手当て未払い分、約9230万円の支払いを求めていたもの。

 奈良地方裁判所は2009年4月、原告の宿日直業務が「常態としてほとんど労働する必要がない勤務」には当たらないとし、県に時間外の割り増し分1500万円の支払いを命じた。一方、宅直については「指揮命令下にない」として支払いの必要を認めなかった。判決を受けて、産科医、県の双方が控訴。2010年11月に大阪高裁は県、産科医双方の訴えを棄却し、今回、最高裁が上告審として受理しなかったことから、判決が確定した。

 原告側弁護士の藤本卓司氏は本誌の取材に対し、「宅直について認められなかったのは残念だが、全国的に医療機関で労働基準法が守られていない状況をぜひ改善してほしい。また、そのような労働環境の背景には医師不足がある。本来3交代で行うべき仕事であり、短期的には病院の集約化など対症療法的な措置を行いながら、中長期的には医師数を増やすべきだ」とコメントした。

 また、奈良県は医療政策部長のコメントとして、「県の主張が認められず、大変残念に思う。県立奈良病院では、医師の宿日直勤務の処遇改善に取り組んでおり、2007年6月から、宿日直勤務中に通常業務に従事した場合は超過勤務手当を支給する供給方式を取り入れている。医師も2004年当時の5人から、現在は9人に増えている。しかし、司法の判断が出たことであるので、今後、県立病院における救急医療などの対応について、検討してまいりたい」との見解を公表している。

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