もがく非正規教員 05年比4割増、弱い立場に重責

西日本新聞 2014年01月03日

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 「非正規公務員」が九州の市町村で増えている問題で、学校現場でも臨時や非常勤の教員が増加している。文部科学省によると、全国の公立小中学校の非正規教員は約11万人に上り、統計を取り始めた2005年から約4割増えた。少子化傾向の中、正規の教員を増やせないためだが、立場の弱い非正規に、不登校児童の対応など難しい仕事を任せるケースも出ている。

 自宅を訪ねると、学校に行かない非行少年がたむろしていた。福岡県内の小学校に勤める40代の女性教員は、かき分けるように奥へ入り、担当する児童に声を掛けた。「学校行こう」

 不登校の児童の担当だったのは数年前。教壇に立つことはほとんどなく、児童宅に通うのが日課。保健室にしか通えない児童の悩みを聞き、保護者の対応に追われた。問題行動のある児童から罵声を浴びたり、度重なる家庭訪問に保護者から抗議を受けたりしたこともある。先輩教員から「あなたが病気にならないように」と忠告された。

 女性は県教育委員会が採用した教員ではなく、自治体が独自に任用した非正規教員。いつ雇い止めされるかと考えると、どんな仕事も拒否できない。家族の介護で残業ができないため非正規の道を選んだ。教員歴は約10年。つらい仕事も多いのに月給は約20万円。正規の半分以下だ。ベテランになれば非正規でも責任ある仕事を任せられるが、研修さえ行かせてもらえない。正規との格差は歴然だ。

 長崎市の小学校で非正規教員を務める20代男性は昨春、初めて学級担任となった。ただ、契約は1年。今春からも仕事があるのか、不安は尽きない。「ちゃんとした先生じゃない、とは思われたくない」。児童にも保護者にも、非正規だとは明かしていない。

 大学卒業後の4年間、非正規にも任用されず他のアルバイトで暮らした年もあれば、病休教員の代理で数カ月の勤務を頼まれたこともある。「断れば次に声が掛からなくなる。他の仕事をするのは難しい」

 毎年、県教委の採用試験に挑んできたが、全て不合格。日常の仕事に追われながら受けた昨夏の試験は散々な結果だった。「現場で経験を積むことで、逆に合格から遠のいている気がする」とため息を漏らした。

 ◆非正規率、全国16.4%

 文科省によると、公立小中学校の教員数は全国で約70万人(2013年5月1日時点)。このうち、非正規は臨時的任用教員(常勤講師)6万3695人、非常勤講師5万2050人の計11万5745人で、全教員の16・4%に上る。

 非常勤講師をフルタイムで勤務したと仮定した場合、非正規率が最も高いのは沖縄の15・8%で、10%超が福岡、大分、宮崎の3県を含む14府県に及んだ。一方、財政に余裕がある東京が最低の3・2%だった。

 教員の人件費をめぐっては、04年度に都道府県の負担割合が3分の2に引き上げられたのに伴い、都道府県が教員の配置や給与額を決められるようになった。しかし、実際は、人件費抑制のため非正規を増やす自治体が増えている。文科省は「学校運営や教育内容への影響が心配され、非正規数を抑える必要がある」(初等中等教育局財務課)と問題視している。

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