就活生は「ブラック企業」に注意を 離職率や他社との比較で見分ける

SankeiBiz 2014.3.9

 平成27年卒業予定の学生の就職活動が本格化している。応募する企業を選ぶときに注意したいのが、若者を使い潰す「ブラック企業」だ。有識者らでつくる「ブラック企業対策プロジェクト」のメンバーで、法政大学キャリアデザイン学部の上西充子教授にブラック企業の見分け方を聞いた。(油原聡子)

■労働条件確認を

 同プロジェクトは昨年9月、労働や教育などの専門家が集まり、発足。日本社会からブラック企業をなくすことを目指している。「新興産業で、若者を大量に採用し、過重労働、違法労働によって使い潰す」企業をブラック企業と定義している。

 上西教授は「ブラック企業を見分けるには雇用契約の基本を知り、客観的なデータを読み解けるようにしましょう」と話す。

 今の時期、就活生が注意した方がいいのが企業の募集要項だ。上西教授は「学生は労働条件はあまり気にせず、やりたいことを考えがち。でも、やりたいことでも労働条件が悪いと続けられないから、しっかりと確認してほしい」。

 募集要項で確認したいのが給与額。残業代が込みなのか、基本給なのか、分かりにくい表記も多々ある。例えば、「給与 大卒22万円(月30時間を超えた時間外労働には別途手当あり)」という表記の場合、月30時間までの残業は22万円に含まれていると考えられるからだ。

■データを読み解く

 企業側は良い人材が欲しいため、ホームページ(HP)や説明会などで基本的に良いことしか伝えていないと思った方がいい。また、就職サイトなどはお金を払って企業が情報を載せていることも頭に入れておく。

 企業の客観的な情報を把握するのに役立つのが、3年後離職率などのデータだ。3年後離職率は業種によって大きな差があるが、大卒者の平均は30%前後。3年後離職率が高い企業は注意した方がいい。また、従業員数の割に採用人数が多い▽平均勤続年数が短い(設立年数も確認)▽有休消化年平均−も併せて確認する。

 1つの企業だけでなく、同業他社や他業種と比較するのも大切だ。就職サイトや企業のHPはもちろん、東洋経済新報社が発行している就職四季報は客観データが豊富で参考になるという。実際にその企業で働く人から話を聞くのが一番だが、上西教授は「何を質問したらいいか分かっていないと、相手が話すのを聞くだけになってしまう。事前にちゃんと準備していって」と話す。

 労働条件について質問したくても、学生は「条件ばかり気にしていると思われてしまうのでは」と悩みがちだ。そういった場合にはキャリアセンターや新卒応援ハローワークの個別相談を利用する。企業について、より詳しい話が聞けるほか、キャリアセンターのOB・OG名簿も活用できる。

 上西教授は「広告情報に気をつけながら、できるだけ信頼できる情報にアクセスして、ブラック企業を見分けてほしい」とアドバイスしている。

 同プロジェクトでは、HP(http://bktp.org/)で大学生向けにブラック企業の見分け方を紹介している。

 ■入社してしまったら抱え込まずに相談機関へ

 もし、うまく見分けることができずにブラック企業に入社してしまったらどうすればいいのだろうか。

 ブラック企業対策プロジェクトの共同代表の一人で、NPO法人「POSSE」の今野晴貴代表は「見分けようとしても見分けられないことはある。だから、ブラック企業に入社したからといって、見分けられない自分を責める必要はない」と話す。労働時間についてきちんと記録し、自分で抱え込まずに相談機関などを利用する。

 今野代表は「ブラック企業によって若者が過酷な状況で鬱病になれば国や社会で人材も枯渇する。働ける人が少なくなれば税収も減る。日本社会に悪影響を与える社会問題」と話している。

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