(100社アンケート) 女性管理職「まだ育ってない」 主要100社中36社

朝日デジタル 2014年11月24日

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 安倍政権は「2020年までに女性管理職を3割にする」との目標を掲げるが、女性登用を進めようとする企業の悩みは少なくない。主要企業100社への景気アンケートで課題を複数回答で聞くと、「管理職に適当な人材が育っていない」が36社で最も多かった。

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 旭化成の浅野敏雄社長は「課長、部長では育ってきているが、比率はまだ少ない」、アサヒグループホールディングス(HD)の泉谷直木社長は「幹部候補の女性の数を母数として増やさないといけない」と語る。かつては女性の採用が少なく、幹部候補がまだ育っていない共通の悩みがあるようだ。

 「男性社員の意識改革が進んでいない」も、33社あった。ANAHDの長峯豊之上席執行役員は「一部の組織長や役員で、重要な判断がいる仕事を女性に任せるのを避けることがある」と話す。管理職セミナーなどでは「機会を公正公平に与えて評価すべきだ」と伝えているという。

 「管理職をめざす女性が少ない」、「育児や介護の施設やサービスが整っていない」を選んだ会社も、それぞれ25社あった。「保育所が足りない」(JTBの高橋広行社長)、「土日祝日や夜間の保育施設の拡充を期待する」(ワコールHDの若林正哉常務)など、行政サービスの拡充を求める意見が目立った。

 具体的に取り組んでいる項目を同じく複数回答でたずねると、「労働時間の短縮や有給休暇取得」が78社で最多。「女性向けの育成プログラムや研修制度」は64社あった。安川電機の津田純嗣会長兼社長は「女性でも働きやすい、働きがいのある職場は、会社の発展にもつながる」。鹿島の中村満義社長は「建設現場でのトイレや更衣室の整備など、職場の改善をやる。結果的に男性にも働きやすくなる」と話した。

 半数以上の会社が経営計画などに女性の活躍推進の方針を明記。管理職登用に向けた数値目標を定めた社や、多様な人材の活用を進める「ダイバーシティー推進室」など専門組織を置いた会社も半数を超えた。

■雇用、人手不足感広がる

 働く現場での人手不足感が、広がっている。必要な人手や人材の確保についてたずねたところ、「確保できていない」と答えた会社は5社あり、前回6月調査から1社増えた。「今は確保できているが、今後足りなくなる可能性がある」も27社にのぼり、前回の14社から、ほぼ倍増した。

 シャープの高橋興三社長は「スペシャリストの不足感がある。スマートフォン用などの中小型液晶パネルの生産には専門技術職が必要だが、足りていない」とこぼす。一度退職した人の再雇用も進めている。

 ファミリーマートでは、店のスタッフが長く勤められるよう、地域ごとに実施している接客スキルを高める社内勉強会の頻度を増やしたが、中山勇社長は「地方に行けば行くほど、人は集まりにくい」と話す。

 専門資格を持つ技術者や現場技能者が不足傾向にあるという、積水ハウスの阿部俊則社長は「かっこいい職場ではないと言われている業界。若い子をもっと入れて教育していく。女性があまり入ってきていないのは、これからの課題」と話す。「パート従業員が集まりにくくなっている」(エイチ・ツー・オーリテイリングの鈴木篤社長)という声もあった。

 一方、「確保できている」企業は、前回より17社少ない64社だった。セコムの前田修司会長は「東京五輪が近づくにつれて、人手不足が顕在化する可能性がある」として、採用計画を見直していく考えだ。資生堂の魚谷雅彦社長は「将来的に、人材確保が難しいと予想される都市部を中心に対応が必要」と答えた。

■企業献金「賛同」23社

 2015年度の賃金の方針をまだ決めていない企業も多いが、6社が「賃金のベースアップ(ベア)を検討する」と答えた。東京製鉄の西本利一社長は「業績次第。組合にもベアの検討を伝えている」と言う。

 「定期昇給の維持を検討」が16社、「一時金を上げることを検討」も5社あった。味の素の伊藤雅俊社長は「労使で協議したうえで決めるが、物価が上がっていくことに十分配慮しないといけない」と話す。「上げるつもりはない」は1社のみにとどまった。

 14年度末の国内の総人件費が、前年度に比べて「増える」と見通している企業は57社。その要因として、48社が「月例賃金や一時賃金の増減」を挙げている。

 経団連が会員企業への呼びかけを再開した政治献金についての賛否では、「賛同する」が23社、「賛同しない」が12社で、「どちらともいえない」がほぼ半数の49社あった。

 新日鉄住金の太田克彦副社長は「企業の健全な発展を促す政党への政治寄付は必要」と話す一方、セブン&アイHDの村田紀敏社長は「個々の企業や業界が、献金で政策を通してくれと言う時代ではない」と指摘する。ダイキン工業の宮住光太執行役員は「献金により、企業の意見が政策に反映されやすくなるかもしれないが、政治に過度に頼るべきではない」と話した。

 住友ゴム工業の池田育嗣社長は「政治と経済界がある程度パイプをもつことは大事だと思う」としつつ、「献金が何に使われ、経済界にとってどんなメリットがあるのかはっきりしていないのが問題」と述べた。

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