軽井沢バス事故、社長ら書類送検へ 「運転ミス」と断定

 軽井沢バス事故、社長ら書類送検へ 「運転ミス」と断定
 
 
マニュアル車のギアとエンジンブレーキのしくみ


長野県軽井沢町で昨年1月、乗客・乗員15人が死亡したバス事故で、長野県警が事故原因を速度の出し過ぎによる運転ミスと断定したことが、捜査関係者への取材でわかった。県警は、バス会社の「イーエスピー」(東京都羽村市)の運行管理に不備があった疑いがあるとして、社長と当時の運行管理者を業務上過失致死傷容疑で書類送検する方針だ。


事故から15日で1年となる。県警は、社長と当時の運行管理者が土屋広運転手(当時65)の運転技術に未熟な点があることを認識しながら、十分な指導を怠った結果、事故を招いたとみている。死亡した土屋運転手も、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の疑いで容疑者死亡のまま書類送検する。


捜査関係者によると、崖下に転落する直前の速度は制限速度の2倍近い時速96キロだった。県警は、車体の検証や走行実験などで事故にいたる経過を捜査。その結果、バスが下り坂に入ったところで、速度をあげていったことが判明。エンジンブレーキが利きにくい高速用のギアで走行したため、速度超過の状態に陥ったと判断した。


下り坂で速度を出し過ぎたため、ギアを低速用に入れられず、エンジンブレーキやその働きを補助する排気ブレーキが利かない「ニュートラル」の状態になった。事故直前にブレーキを踏んだ形跡があったが、十分減速できなかった、との見方を固めた。


土屋運転手は2015年12月、イーエスピーの採用面接で「長距離の経験がほとんどなく、大型バスの運転に不慣れだ」と不安を訴えていた。入社後、事故を起こすまでに走行訓練をしたのは1回だけだった。


イーエスピーは事故後、国土交通省による特別監査で、運転手に適切な指導をしていないなど道路運送法の違反が33件確認され、貸し切りバスの事業許可が取り消された。運行管理者だった男性は運行管理者資格者証の返納が命じられ、昨年3月にイーエスピーを退職した。




《長野県軽井沢町のスキーツアーバス転落事故》 2016年1月15日午前1時55分ごろ、長野県軽井沢町軽井沢の国道18号(碓氷〈うすい〉バイパス)の入山峠付近の下り坂で、スキーツアーの大型バス(乗客・乗員41人)が対向車線を横切り、ガードレールを押し倒して道路脇の崖下に転落した。19〜22歳の大学生13人と運転手2人の計15人が死亡。26人が重軽傷を負った。バス会社や仲介業者の安全軽視の実態が次々と明らかになり、国がバス会社の事業許可を更新制にするなど様々な対策を打ち出すきっかけになった。

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