労災認定訴訟 「ヤマト運転手過労死」 妻、残業120時間と主張 熊本地裁初弁論

毎日新聞 2017年6月15日 西部朝刊

https://mainichi.jp/articles/20170615/ddp/012/040/013000c

 宅配便最大手「ヤマト運輸」のドライバーだった長尾倫光(のりみつ)さん(当時46歳)が職場で死亡したのは過労が原因として、長尾さんの妻由美さん(46)が労災を認めなかった熊本労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の第1回口頭弁論が14日、熊本地裁で開かれた。
 長尾さん側は死亡直前1カ月間の時間外労働が労災認定の基準となる100時間を上回り120時間を超えていたと主張。記者会見した長尾さん側の弁護団の松丸正弁護士は「タイムカードの打刻前後や昼の休憩時間などの『見えない労働時間』が一番の大きな争点になる」と話した。

  国側は請求の棄却を求めており、同社は「遺族と国が係争中なのでコメントは差し控えたい」としている。
 訴状などによると、長尾さんは熊本市内の支店で勤務中の2014年12月14日に倒れ、くも膜下出血のため翌日死亡した。由美さんは、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付などの支払いを熊本労基署に求めたが、15年8月に不支給処分が決定。熊本労働者災害補償保険審査官への審査請求なども棄却されたため、今年4月に不支給処分取り消しを求めて熊本地裁に提訴した。【野呂賢治】

 娘の入学見届けぬまま
 「間近に迫っていたクリスマスイブに娘の枕元にプレゼントを置けず、翌春の小学校入学も見届けることができなかった。子煩悩だった本人が誰より一番悔しいと思う」。由美さんは長尾さんの思いをそう代弁する。
 長尾さんは14年12月11日、1週間ぶりの休日に由美さんと小学校入学を控えた一人娘の美里さん(8)を連れて市内の玩具店に出かけた。ランドセルを買い、美里さんにクリスマスプレゼントに何が欲しいか聞いた上でこっそりと着せ替え人形を買っていた。

しかし3日後の14日夜。熊本市北区の同社徳王支店で倒れ病院に搬送されたが、翌日息を引き取った。タイムカードを打刻した後に集配車の荷台の清掃などをしていたとみられる。由美さんは「当時は恒常的にサービス残業があり昼食休憩時間も取れないほどだった」と振り返る。
 そしてこれから本格化する裁判への思いを語った。「夫のような人を今後出さないためにも会社や同僚は本当のことを話してほしい」

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