メーカー責任初認定=「石綿警告表示怠った」−9社と国に2億円賠償命令・京都地裁

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_date2&k=2016012900614
時事ドットコム 2016/01/29

 建設現場で建材に含まれるアスベスト(石綿)を吸い込み、肺がんや中皮腫を発症したとして、元建設労働者や遺族計27人が国と建材メーカー32社に計約10億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、京都地裁であった。比嘉一美裁判長は「石綿を含む建材を警告表示なく販売した」として、ニチアス(東京)など9社に計約1億1200万円の支払いを命令。規制措置を取らなかったとして、国にも約1億400万円の賠償を命じた。
 同様の集団訴訟は全国6地裁に起こされ、メーカーの責任が認められたのは初めて。判決は5件目で、国に賠償を命じたのは東京、福岡、大阪各地裁に続き4件目。

 過去の判決で、メーカー責任は「加害行為者の特定が不十分」として否定されてきた。比嘉裁判長は、医学的知見の確立時期などから、石綿吹き付け材は1972年以降、屋内で使われる石綿含有建材は74年以降、屋外は2002年以降、具体的な警告表示を行う義務があったと判断した。

 その上で、「建材を警告表示なく販売し、流通に置いたことが加害行為に当たる」と指摘。おおむね10%以上のシェアを持つメーカーの建材は、原告に被害を与えた蓋然(がいぜん)性が高いとして、疾病との因果関係を認めた。

 国に対しては、72年以降、防じんマスクの使用義務付けなどを怠ったとし、メーカーは原告23人、国は15人(一部重複)について賠償義務を認定した。2人は暴露時期などから請求を退けた。

 厚生労働省石綿対策室の話 厳しい判決。内容を十分検討し、関係省庁と協議して対応する。

 ニチアス広報課の話 当社の主張が認められなかったことは遺憾。即日控訴する。

◇賠償を命じられた建材メーカー
新日鉄住金化学(東京都千代田区)      
日東紡績(同)               
三菱マテリアル建材(現エム・エム・ケイ、同)
ニチアス(東京都中央区)          
太平洋セメント(東京都港区)        
エーアンドエーマテリアル(横浜市)     
大建工業(富山県南砺市)          
ケイミュー(大阪市中央区)         
ノザワ(神戸市中央区)           

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