新国立の現場監督自殺、労災認定 「極度の長時間労働」

 朝日DIGITAL 2017年10月10日

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2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設工事に従事していた現場監督の男性(当時23)が自殺した問題で、新宿労働基準監督署(東京)が「極度の長時間労働」による精神疾患が自殺の原因だったとして労災認定したことがわかった。遺族側代理人の川人博弁護士が10日、発表した。

「バカか、てめえ」新国立建設で自殺 過酷労働の内情

認定は6日付。男性の両親が労災を申請してから3カ月足らずという「異例の早さ」(川人氏)での認定となった。

男性は、建設工事を受注した大成建設などの共同企業体(JV)の下請け会社、三信建設工業(東京)に昨年4月に入社し、12月中旬から地盤改良工事の現場監督をしていた。今年3月2日に失踪し、4月15日に長野県内で自殺した状態で発見された。

川人氏によると、新宿労基署は、男性が失踪前日までの1カ月間に190時間18分の時間外労働をしていたと認定。長時間労働や深夜労働などの過重な業務などによって精神障害を発病し、自殺に至ったと認めた。厚生労働省は、精神障害の発病から直近の1カ月間で160時間以上の時間外労働があった場合、業務外で特別な事情がなければ、長時間労働を原因として労災を認定している。このため、今回は男性と一緒に働いていた複数の現場監督が証言しているパワハラの有無について、労基署は判断をしていないという。

川人氏は記者会見で、「3カ月未満の労災認定は異例中の異例だ。迅速に調査した意義は大きい」と労基署の対応を評価。そのうえで「国家的行事だからと言って、その準備で労働者の命と健康が犠牲になることは、断じてあってはならない」と話した。

三信建設工業は取材に対し、「二度と繰り返さないよう、深い反省のもと労働環境の改善に力を尽くす」とコメントした。(贄川俊)

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新国立競技場の建設工事に従事していた現場監督の男性(当時23)について、労働基準監督署が過労自殺だったと認定したことを受け、男性の両親が代理人の弁護士を通じてコメントを出した。全文は次の通り。

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息子の死の労災認定に思うところ

都内在住 父・母

この度は、労働基準監督署におかれましては短い期間に息子の過重労働を調査して下さり、労災認定していただいたことに深く感謝致します。

今は息子の仕事ぶりを認めていただいたと受け取り、救われる思いですが、忍耐強い息子を助けてやれなかったことが、私達にとって痛恨の極みです。

息子の笑顔を二度と見ることができない悲しみは、生涯癒えることはありません。

ただ会社側においては、社長をはじめ社員の方が息子の死を悼み、死因が過重労働にあった事を認め、労災申請にあたっても真摯(しんし)に対応してもらった事は私たちの大きな救いとなりました。

この様な不幸を二度と繰り返さないよう、深い反省のもと社員の労働環境の改善に力を尽くしていただきたいと思います。

また、この工事に関与しているすべての皆様方には、限られた工期の中で、これから本格化する工事に従事する方達の命と健康を守る為に、尽力していただきたいと思います。

最後に、東京オリンピック・パラリンピックが無事に開催される事を切に願います。

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