東京新聞 <働き方改革の死角>昼休み労働増加 残業減のしわ寄せか

 <働き方改革の死角>昼休み労働増加 残業減のしわ寄せか

 
東京新聞 2019年5月13日 朝刊
 
A子さんのお弁当(奥)は「昼休みに10分で食べる」ためにごはんは少なめ。対照的に子どもの弁当(手前)は丁寧につくるという=提供写真
 
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 正午から午後1時までの「昼休み」の時間帯に働く人が増えていることが、国の統計を分析した専門家の指摘で分かった。「働き方改革」で残業は減り、深夜に働く人は減少。ところが、そのしわ寄せが昼休み返上の仕事につながっている。 (池井戸聡)
 リクルートワークス研究所(東京)の坂本貴志研究員が、国が五年に一度行う「社会生活基本調査」の詳細を分析。二〇一六年に正午から午後一時までの時間帯に仕事をしていた人の比率は35・4%で、一一年(32・2%)より3・2ポイント増えていたことが分かった。
 この五年で深夜に仕事をしていた人は減少。だが昼休みの時間帯に働く人は増えた。なぜか。坂本研究員は「フレックスタイム制や在宅勤務の広がりで、この時間帯に働く人が増えた側面はある」と指摘。一方で「残業が減る中で仕事をこなすため、休憩すべき時間帯に仕事をさせられた人が増えたのでは」と強調した。
 労働基準法は労働時間が六時間超八時間以下の人に最低四十五分、八時間超の人に一時間の休憩を労働時間の途中に与えることを企業に義務付ける。違反した使用者には六月以下の懲役または三十万円以下の罰金が科せられる。
 だが残業を避けるため、昼休みに働かざるを得ない人が増えているのが実態のようだ。東京都内の大手損保で経理を担当するA子さん(42)は「働き方改革が言われだした三年ほど前から上司への申請が必要になり残業しにくい。だからお昼に働く」と告白。「時間がないのでいつもお弁当を十分以内に食べる。早く食べ終えるため、ご飯も少なめでつくる。トイレを我慢し働く日もある」と打ち明けた。
 働く人からすると、残業が減っても昼休みに働くなら長時間労働は変わらない。昼休みなどの休憩時間なく働かせるのはそもそも違法なため、残業手当(通常の25%増しで支給)もなく、全くの「タダ働き」となる。
 坂本研究員の分析では、昼休み以外にも働く人の比率が増えた時間帯が二つあった。一つは午前六〜八時。残業を避けるため始業前に働く人が増えた可能性がある。午後三時〜三時十五分も微増。坂本研究員は「『三時の休憩』を廃止する企業があったのでは」と推察する。
 休憩時間返上で働く人は今後、増える恐れも。四月から大企業を対象に残業上限を月百時間未満などと規制する法律がスタート。企業は昼休みを「抜け道」に使いかねない。
 残業規制は中小企業には来年四月からの適用で一年の猶予があるのも盲点。大企業が仕事を下請けに回せば、そこで働く人は「昼休み労働」を迫られる懸念も強まる。
 日本労働弁護団事務局長の岡田俊宏弁護士は「残業規制を守ると同時に休憩時間を与えるのは企業の義務。人員体制整備とともに労使で無駄な会議や仕事がないか点検することも重要」と話す。
 
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<社会生活基本調査> 国民の生活習慣の変化などを調べるため、総務省が5年に1度行っている調査。直近は2016年10月の実施で10歳以上の約19万人が回答。このうち勤労者約6万人に特定日の生活時間配分を尋ねる調査は1日24時間を15分単位に分け、その時間帯に何をしていたか質問。回答者は「睡眠」「食事」「仕事」など20の選択肢から答えを選んだ。
 

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