毎日社説: 生活保護削減 きめ細かい支援が必要

毎日新聞 2013年01月29日 

 生活保護の基準が下げられることになった。働いても年収200万円に届かない「ワーキングプア」が勤労者全体の2割以上となる中、人気タレントの親族の受給問題などをめぐって生活保護への風当たりは強まっていた。今回の見直しは選挙公約で1割削減を掲げた自民党の強い意向に沿ったものだ。ただ、生活保護基準はさまざまな制度と連動する。特に子育て中の低所得者層に深刻な影響が及ばないよう細心の注意を払うべきだ。

 厚生労働省は生活保護を受けていない低所得世帯の消費実態を調査し、同じ家族構成の生活保護世帯への支出額と比較した。その結果、子どものいる世帯では生活保護を受けていない世帯の消費支出の方が少なかった。こうした検証結果を参考にして都市部と町村部、年齢別、単身や夫婦と子ども世帯、母子世帯などに分けて、生活保護のうち月々の日常生活費に相当する「生活扶助」の基準額が示された。

 政府案によると減額は13年度から3年間で総額740億円(約7.3%)に及ぶ。特に引き下げ額が多いのは都市部の子育て世帯で、40代夫婦と子ども2人の世帯で月額2万円引き下げられる。母子世帯も減額される。最も受給者数が多い高齢の単身世帯はほとんど変わらず、むしろ微増のケースもある。

 懸念されるのは生活保護基準が最低賃金をはじめ、地方税非課税基準、社会保険料、保育料などと連動していることだ。生活保護を受けずに働いて得た収入でなんとか最低限の生活をしている人々がしわ寄せを受ける恐れがある。低所得世帯の小中学生に学用品や制服代、修学旅行費などを支給する「就学援助」は現在150万人以上が対象となっている。将来の社会を支える子どもたちへの影響は最小限にとどめたい。

 減額される子育て世帯に対しては職業訓練や就労機会の確保、保育所利用の促進など、働いて収入を増やすための支援が不可欠だ。生活保護を減らすだけでは困窮家庭が増えていくばかりだ。住居や健康面の支援なども含め、自立に向けたきめ細かい支援が必要だ。

 生活保護費の約半分を占める医療扶助については具体的な見直しが手つかずのままだ。医療機関による過剰診療・投薬をチェックする方法、自己負担のあり方などについて議論は尽くされているだろうか。

 厳しい雇用状況が続く中、生活保護受給者は210万人を超え、保護費総額も4兆円に迫ろうとしている。何らかの歯止め策が必要なことは言をまたないが、生活困窮の実態の改善を同時に進めなければ本質的な解決にはならないだろう。

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