「方向性180度違う」9条改正に識者疑問

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Nikkansports.com 2015年2月3日 共同通信配信

 「いま自衛隊の任務拡大を視野に9条改正を掲げるのは、方向性が180度違う」。3日、憲法9条改正に意欲を示した安倍晋三首相。

 識者からは「邦人人質事件の反省点は外交能力のなさでは」「平和国家としての歩みを再確認すべきだ」と疑問の声が上がった。

 非政府組織(NGO)「ピースボート」共同代表で、学者らでつくる「集団的自衛権問題研究会」の代表も務める川崎哲さんは「今回のような居場所すら分からないケースは米軍でも救出が不可能だったはず」と指摘。

 その上で「邦人が拘束されてから数カ月間、日本政府は解放のための交渉をできていたのか。日本人の命を守れなかったことを反省して検証し、独自の外交力や情報収集力をどう築くかを議論すべき時なのに、自衛隊の活動を広げようとするのでは方向性が180度違う。筋違いも甚だしい」と川崎さんは語る。

 中野晃一上智大教授(政治学)も「9条を改正すれば自衛隊がスーパーマンのように全てを守ることができるのか」と首をかしげ「こういう時だからこそ平和国家としての日本の実績を大事にして、アピールしていくべきだ」と主張する。

 過激派「イスラム国」に対し「罪を償わせる」と強い調子で怒りも示した安倍首相。米紙ニューヨーク・タイムズは「こうした報復の誓いは、対立を嫌う日本では異例だ」と紹介した。

 川崎さんは「テロリストを司法手続きにかけるという意味なら分かるが、米国などによる空爆に参加する意思を表明したと誤解される可能性もあり、中東の人々に敵対心を持たれかねない」と、首相の相次ぐ「前のめり発言」を危ぶんだ。(共同)

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