今野晴貴さん 深刻化する「ブラックインターン」 アルバイトの代わりに使われている実態 (10/9)

深刻化する「ブラックインターン」 アルバイトの代わりに使われている実態
https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20191009-00146029/
今野晴貴 | NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。2019/10/9(水) 17:29

(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

 今月1日、2020年3月に卒業する学生に対する内定式が全国で行われた。今後、来年の同時期にかけて現在大学3年生や大学院修士1年生などの就職活動が本格化していくことになる。

 ここ数年間は人手不足の影響で就活生の「売り手市場」になっていると言われているが、採用されても、ほとんど最低賃金と同額の時給しか受け取れない非正規雇用や、正社員であっても長時間労働やパワハラ・セクハラが蔓延するような「ブラック企業」といった可能性があるため、学生側もできるだけよい仕事に就けるよう必死に就職活動に取り組んでいる。

 その学生の不安につけ込んで、いま「ブラックインターン」が広がっている。これは名前こそ「インターンシップ」となっているが、その中身は営業や受付対応といった普通の労働者が行う業務を無償でさせるという行為である。

 「就活のためになる」、「社会経験になる」と学生を騙して、いわばタダ働きさせるブラックインターンがいま急激に増加しているのだ。今回は、その実態と対処法について、紹介していきたい。

学生の5人に4人が参加するインターンシップ
今日の大学生にとって、インターンシップに参加するのはもはや当たり前になっている。新卒学生向け就職サイトを運営する「マイナビ」の調査によれば、2020年に卒業予定の学生の79.9%がインターンに参加していることがわかっている。

 なお、2014年卒業の学生のインターンシップ参加率は32.1%と、この6年間でインターンシップに参加する学生の割合は2倍以上になっている(2020年卒 マイナビ大学生 広報活動開始前の活動調査)。

 平均参加社数(インターンシップ参加学生1人あたりが参加した企業の数)に関しても、2014年卒の1.7社から2020年卒は3.6社と倍増している。つまり、学生の5人に4人が、一人あたり3社から4社のインターンシップに参加しており、かつインターンシップの規模はここ数年間で急増しているということだ。

 さらに、インターンシップに参加する時期については、参加学生の11%は大学入学後から2年次までに初めてインターンシップに参加したと回答しており、インターンシップの早期化が起こっていることが考えられる。

 実際、私が代表を務める[www.npoposse.jp NPO法人POSSE]に寄せられたブラックインターンの相談でも、大学1年生の夏休みに参加したというものも珍しくなくなっている。

学生に「タダ働き」をさせるブラックインターン企業
では、具体的に寄せられた相談を踏まえながら、ブラックインターンの実態を見ていきたい。

Aさん(大学生)、映像制作会社での「職場体験型インターン」

職場体験ができると紹介されて参加したが、主にオフィスでの事務作業や撮影現場でのアシスタント業務を任せられ、映像制作についての知識やノウハウを一切教えてもらえない。食費と交通費込で日額3000円が支給されるが、オフィスで撮影場所を確保するための調整(電話かけ)を6時間行っただけの日もあった。

 インターンシップと聞くと、学生がグループになって企画案を議論したり、社員に付き添って業務を見学したりという姿を想像するのが一般的だと思われるだろう。

 しかし、今や「インターン学生」が、通常は社員が行うような会社の基幹的業務(電話での調整や撮影の準備)を担っていることもあるのだ。上記のケースは、6時間で3000円と時給に換算すれば500円で明らかに最低賃金を下回るが、会社は「インターンだから」と労働基準法違反を正当化している。

 後で説明するように、もちろんこれは違法行為だ。

 広告代理店で企画や運営を経験できると考え応募したが、インターンシップとは名ばかりで、5日間、8時から18時まで、取引先に発送する商品の梱包作業や倉庫の整理といった雑用を行うよう命じられた。日給として1000円、5日間で5000円が支払われた。

 こちらのケースも、「ベンチャー」や「広告代理店」といった学生にとって魅力的に映る会社で、インターンと称して実質的にタダ働きを強要していたというものである。このインターン学生がやっていたのは、アルバイトが行うような単純作業で、到底インターンとは呼べない。

 この2つの事例は決して珍しいものではない。これまで「インターン」と言えば大企業で行われるものがイメージされるケースが多いと思われるが、今やアルバイトで採用するコストすら負担したくないベンチャー企業や零細企業が、インターンとして学生にタダ働きを命じるケースが増えているといえる。

「インターン」であっても未払い賃金を請求できる
では、もし「ブラックインターン」の被害に遭ってしまったらどうすればいいだろうか。最初に確認すべきことは、「インターン」という名称がついているからといって法的に何でもあり、ということではない。

 インターンシップという形で無給でも合法な作業と、給料が支払われなければいけないアルバイトなどの「労働」は区別されている。実際、下記のような通達が旧労働省(現、厚生労働省)から出されている。

「一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられる」(旧労働省平成9年9月18日基発第636号)。

 つまり、直接企業の利益となるような仕事を行っている場合などは、「労働者」として扱われ、賃金が支払われなければならないということだ。

 必ず出社しなければいけなかったり、誰にも教えてもらえず一人で業務を行ったりするケースは、仮に「インターンシップ」と呼ばれていても給料が支払われるべきであることがこの通達からわかる。

 そのため、インターンと呼ばれていても、仮に日給1000円のインターン契約書にサインしてしまったとしても、実際の業務が仕事であれば賃金を請求できる。

 上記のベンチャー広告代理店の倉庫で「インターン」していたBさんは、どう考えてもこの日給1000円でのインターンはおかしいと思い、POSSEに相談に来た。POSSEのスタッフはBさんに未払い賃金を請求することを勧め、Bさんは会社に請求書を郵送した。

 すると、会社は反論することもせずに、請求金額約4万円を3日後にBさんの銀行口座に振り込んだ。無事に賃金を受け取ることができたBさんはこう話している。

「直接的に企業の利益追求に関わる業務を任されながらその報酬が払われないことに怒りを感じました。例えば、スーパーやラーメン屋でアルバイトとして働いていれば、給料が発生することが当たり前なのに、インターンシップという名目で働いたら給料が発生しない。そんなことをする企業が当たり前に存在していることが一番許せないです。これは現代の奴隷制みたいなものです」

 Bさんのインターン先がすぐに給料を支払っていたのは、最初から自分が違法行為をしていることを自覚していたからだろう。

 このようなブラックインターンを使う企業は、自覚的に、違法行為だと知りながら学生をタダ(あるいはタダ同然で)で働かせようとしているケースが多い。そのため、Bさんのケースのように、実際に賃金を請求されれば潔く支払う場合があるのだ。

 ブラックインターンが蔓延る業界は、これまでPOSSEに寄せられた相談を見てみると、映像制作やIT、広告代理店の企画といったクリエイティブな業務を行う仕事で特に多いようである。

 この夏休みに、ブラックインターンの被害に遭ったと感じる大学生の方は、ぜひ専門の相談窓口にお問い合わせいただきたい。

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今野晴貴
NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。
労働・福祉運動家/社会学者。NPO法人POSSE代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。年間2500件以上の若年労働相談に関わる。著書に『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)、『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?』(星海社新書)など多数。2013年に「ブラック企業」で流行語大賞トップ10、大佛次郎論壇賞などを受賞。共同通信社・「現論」連載中。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。無料労働相談受付:soudan@npoposse.jp、03−6699−9359。 

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