非正規社員の育休取得

読売新聞 2013年7月18日

育休中の派遣スタッフを対象にパソナが開く「キャリアママ・カレッジ」。復帰に向けて、先輩の話を聞いたり情報交換したりする(パソナ提供)

 パートや派遣社員など非正規社員の育児休業取得には、様々な困難が伴う。育休を取得できても、条件を満たさず育児休業給付金を受給できない場合もある。「働き始める時から、給付などの条件を満たす労働時間や雇用期間などを知っておくことが大切」と専門家は助言する。

 育児休業は親が育児・介護休業法に基づき、原則として子が1歳になるまでの希望する期間に取得できる(保育所に入れない場合などは1歳半まで)。雇用保険加入者で一定条件を満たせば、育休中は育休給付金として、休業前の平均賃金の原則50%が、子の1歳(申請すれば1歳半)の誕生日まで支給される。

 ただし、非正規社員は育休を取得できる基準が、無期雇用の正社員と異なる。働き方が不安定になる場合も多く、育休給付金の受給条件を満たしにくい。社会保険労務士の佐佐木由美子さんによると、非正規社員が育休を取得するには〈1〉同じ事業主に1年以上継続して雇用されている〈2〉子の1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれる――などが求められる。

 育休給付金の受給にも〈1〉雇用保険の加入者である〈2〉育休開始前の2年間に、給与支払日数が11日以上ある月が通算12か月以上ある――などの条件を満たす必要がある。雇用保険に加入できるのは、31日以上の雇用見込みがあり、1週間の所定労働時間が20時間以上ある人だ。

 働く女性の約55%が非正規社員だ。だが国立社会保障・人口問題研究所の調査(2010年)によると、05〜09年に第1子を出産したパート・派遣社員の女性で、育休制度を利用して仕事を続けた人は4%(正社員は43%)。厚生労働省によると、12年度に育休給付金を支給された約23万7400人中、非正規社員は7743人だけだった。

 長女を昨秋出産した望月彩恵さん(28)は、派遣会社「パソナ」の派遣社員として、育休を取得中だ。育休給付金も受給しているが、産休に入った昨年9月までの雇用期間は、ちょうど1年。育休取得や育休給付金受給の条件を満たしたタイミングだった。「妊娠がわかってからも復帰を前提に派遣会社に相談し、条件を満たせるよう意識して働いてきました」と望月さん。

 佐佐木さんは「育休取得を考えている非正規社員は、働き始めた日から育休開始が可能な日を逆算してみてください」と助言する。妊娠後、つわりなど体調不良で仕事を休むことも考えられ、わずかな差で条件を満たせないこともあるからだ。

 非正規社員が個人で加入できる労働組合「東京ユニオン」には、育休を取得できないという非正規社員からの相談が相次ぐ。妊娠を告げると「次の契約更新はない」と言われた人もいるという。副執行委員長の関口達矢さんは「妊娠・出産を理由とした雇い止めは禁止されている。契約打ち切りを告げられたら理由を確認し、理由が妊娠なら、解雇を撤回させられる」と話す。

 非正規社員は2〜3か月単位の契約の人が多く、継続雇用期間が短く不利だ。「契約期間が短くても更新を繰り返していれば、継続雇用の実績や1歳以降の雇用見込みを主張し、育休を交渉できる」と助言している。

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