最低賃金 密室の議論 審議会あすにも結論

2014年7月27日 朝刊

中央最低賃金審議会小委員会に臨む委員ら=23日、厚労省で(写真省略)

 あらゆる労働者の給料の基準となる「最低賃金」の今年の引き上げについて、国の審議会は二十八日にも結論を出す見通しだが、会議は非公開。核心部分は議事録もない。最低賃金ぎりぎりで働く非正規雇用の人が増える中、生命線に等しい引き上げ額の、決定過程の公開を求める声が出ている。 (柏崎智子)

 今月一日、厚生労働省で開かれた中央最低賃金審議会の専門部会小委員会。始まって間もなく、満席の傍聴者は全員外へ出された。二時間余りの会議で、傍聴できたのは五分間だった。

 後日、公表される議事録も、抜粋にすぎない。

 最低賃金を引き上げたい労組側委員と、抑えたい経営者側委員とが、それぞれ引き上げ額を提示して対立するのが通例だが、議事録には、双方が提案した引き上げ額が書いていない。

 労使の委員の提案に開きがあると、公益(有識者)委員がそれぞれの意見を別々に聴く「公労会議」「公使会議」を行う。だが、議事録には公労・公使会議のやりとりは一文字もない。労使の委員が何を主張し、何を妥協し、なぜその金額になったか、分からない。

 厚労省賃金時間室は「非公開の小委員会の中でも特に核の部分」と、議事録非公開の理由を説明する。

 「密室審議はやめるべきだ」。二十二日、貧困問題に取り組む弁護士や学者、労働組合員ら二百五十人が連名で、国の審議会へ向けたアピールを発表した。

 現行の最低賃金は平均で時給七百六十四円。最高の東京で八百六十九円、最低の沖縄、長崎、島根県などは六百六十四円。フルタイムで働いても年収は百万円台にとどまる。海外の先進国と比べても低水準だ。

 呼び掛け人の宇都宮健児・元日弁連会長は「政策決定過程の透明化は民主主義の基本だ」と訴えた。

◆弁護士ら「決定過程公開を」

 鳥取県の地方最低賃金審議会は六年前、完全公開へ踏み切った。当時の会長の藤田安一鳥取大学教授(公共政策学)は「公開して支障はなく、活性化した。むしろ非公開では委員間の信頼を失う」と話す。

 藤田教授は一九九八年から公益委員となり、二〇〇八年から一三年まで会長を務めた。就任当時、ワーキングプア拡大の背景として最低賃金の低さが社会問題化。国民の関心が集まる中、決定過程の透明化が必要だと考えた。

 会長就任後初の審議会。事務局が用意した台本は従来どおり「非公開」だったが、「完全公開したい」と提案。予想に反して委員から反対はなく、すんなり了承された。決まってしまえば事務局も協力的だった。

 経営者側委員「鳥取の経済状況を考えたら引き上げられない」

 労組側委員「まともな賃金として設定してほしい」

 会議では激しい応酬が相次ぎ、経営側委員が全員席を立ったこともあったが、公労・公使会議もやめて、すべてオープンにした。最後はちゃんと決着した。「会議が活性化した。別々に擦り合わせすると、双方に不信感を生む。それをなくせた」

 ただ、同様に全面公開にしたのは和歌山県ぐらいでなかなか広がらない。藤田教授は「会長の一言で公開できる。信念を持って決断してほしい」と話した。

 <最低賃金> 事業者が労働者に支払わなければならない法定の最低限度額。正社員、パート、アルバイト、派遣など雇用形態にかかわらず適用され、違反した事業者には罰則もある。国が示す引き上げ目安額を参考に都道府県労働局がそれぞれの地域の金額を決める。毎年改定され、10月から新しい最低賃金が適用される。

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