被災42市町村:震災理由に106人退職 心身の疲弊深刻

毎日新聞 2014年07月27日

震災や原発事故により早期退職した職員数(省略)

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県の沿岸部や避難区域となった自治体で、少なくとも106人の職員が震災を理由に早期退職したとみられることが分かった。原発事故などに伴う職員自身の移住が理由の3割だった一方、「住民対応の疲れ」や「業務増による過労」「心の病気」なども目立った。震災から3年を超え、被災した不自由な環境で復興業務に当たる職員の疲労や精神的な負担が深刻化している現状が浮き彫りになり、専門家は早急なケアの必要性を指摘する。

 毎日新聞は5〜7月、42市町村(岩手12、宮城15、福島15)にアンケート調査した。2011年3月11日〜14年3月の早期退職者は1843人で、このうち震災や原発事故が理由とみられる退職者数は12市町村で106人に上った。退職理由を「特定できない」と回答した自治体もあり、さらに多くの職員が震災をきっかけに退職を余儀なくされた可能性がある。

 自治体別では、福島県双葉町21人▽大熊町17人▽いわき市15人▽浪江町14人−−の順で、福島県で全体の8割超の91人を占めた。退職理由を複数選択で尋ねたところ、3県では「震災・原発事故による移住」が35人だった。「業務増による過労」が19人、「被災した住民の対応の疲れ」が9人、「心の病気」が8人。その他は「被災した自宅の整理」「家族などの避難」「業務対応の変化」などだった。

 労働環境への懸念を尋ねたところ、「多くの職員が住宅再建を果たせていない」(岩手県大槌町)、「復興のさなかで最も力を傾注すべき時だが、職員は震災直後から走り続けている」(宮城県石巻市)、「避難先から通勤する数十人の職員の疲労を懸念」(福島県川内村)などの声が上がった。

 福島県で自治体職員のストレス調査を続ける同県立医科大の前田正治教授(災害精神医学)は「被災地、特に福島の避難自治体の職員の疲弊は深刻だ。仕事量の増加に加え、住民の不満や不安が支援をしている職員に向けられることもある。仕事への士気が下がり、退職につながっていくのではないか。市町村内部だけではなく外部の組織が介入し、心をケアする仕組み作りが急務だ」と強調する。【まとめ・喜浦遊、小林洋子】

この記事を書いた人