「非正規」増、訴えにずれ 若者の就労環境依然厳しく

神戸新聞 2014/12/9

非正規雇用の増加を背景に設けられた「三宮わかものハローワーク」の窓口=神戸市中央区小野柄通7(省略)

 雇用情勢の改善で有効求人倍率は上向いているものの、中身を見れば、非正規雇用の増加に歯止めがかからない。いまや働く人の4割近くに達し、その平均年収は200万円以下。格差や貧困の温床とされる。雇用施策は衆院選の争点の一つ。非正規雇用では与野党で論点の違いも見える。(石沢菜々子)

 JR三ノ宮駅前の「三宮わかものハローワーク」。就職氷河期に大学などを卒業し、非正規で働く若者が正社員として再就職できるよう支援する。厚生労働省が7月に開いた。

 9月から通う神戸市須磨区の女性(29)は「非正規の求人が多く、雇用が改善している実感はない」。建設や介護など人手不足の職種で求人があるが、「若者の希望と一致していない」(同ハローワーク)という。

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 1人につき何人分の仕事があるかを示す有効求人倍率。兵庫で見るとリーマン・ショック後に0・42倍まで落ち込んだ後、長期で改善傾向が続く。現在は0・91倍だが、正社員は0・56倍にとどまる。

 総務省の労働力調査では全国の正規・非正規を合わせた労働者数は10月時点で5279万人。リーマン・ショックで落ち込んだ2009年から回復傾向にあり、この2年では125万人増加。うち正社員は42万人減り、パートやアルバイト、派遣といった非正規は167万人増えた。中でも15〜24歳の若年層は非正規が半数近くを占め、若者が正社員になりにくい状況が続く。

 「長く働いても最低賃金並み」「有給を取得すると、契約を更新してもらえない」。労働相談などに取り組む「ひょうごユニオン」(神戸市中央区)には非正規の待遇改善を求める声が寄せられる。

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 非正規雇用をめぐる各党の公約では、民主、維新、社民、生活など野党の多くが、正規・非正規の区別なく、同じ仕事には同じ賃金を支払う「同一労働・同一賃金」を掲げる。自民や公明は明記せず、正社員化の推進や格差解消などを盛り込む。

 与野党で対立軸が明確なのが、自民、公明が成立を目指した「労働者派遣法改正案」だ。企業の派遣労働者受け入れ期間の上限(現在は3年)を事実上撤廃する内容だった。解散で廃案になったが、共産など野党は「賃金水準の低い非正規雇用を固定化する」と反発した。

 ひょうごユニオンの塚原久雄事務局長(51)は「安い労働力としての非正規雇用が増える一方では、労働者の生活が守れない」と指摘する。

 【労働者派遣法】 通訳など専門性の高い分野に限定して1986年に施行。規制緩和の流れの中で業種が増え、2004年に対象業務が製造業まで広がった。多様な働き方を可能にしたが、非正規雇用の拡大を後押しした側面もある。

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