〔韓国〕公共部門正規職転換どこまできたか (9/27)

公共部門正規職転換どこまできたか

毎日労働News 編集部 承認2019.09.27 08:00

(W)韓国では、公共部門の非正規職の正規職転換が文在寅政府の基本方針として実施されてきました。毎日労働Newsに著名な論者がその評価をめぐる意見を述べています。注目すべき内容だと思い、試訳してみました。試訳文責・脇田滋。

 文在寅大統領は、就任後初めての訪問地として仁川国際空港を選択し、公共部門非正規労働者に会った。非正規職ゼロ時代を開くと言った。政府は、1段階から3段階まで正規職転換計画を立てて時刻表を作って推進した。転換対象者の絶対多数が正規職になったという自画自賛もあるが、転換排除や子会社をめぐる論議が絶えない。文在寅政府が任期折返し点を回っている。公共部門正規職転換、どこまで来て、どこへ行かなければならないのだろうか。

困惑している政府 政策で転落したようだ

イ・ビョンフン中央大教授(社会学)

 公共部門非正規職の正規職転換政策を文在寅政府が初めて試みたわけではない。参加政府はもちろん、李明博・朴槿恵政権でも非正規職問題に対応する政策の一つとして公共部門の正規職転換カードを書いた。文在寅政府は、大統領が強い意志を見せてガイドラインとして以前の政府より転換対象の幅を拡大した点で前向きな側面が明確にある。ただ、履行のための条件を事前に緻密に準備できずに推進して見たら、各種の問題が発生した。公務職と無期契約職が過去より多く量産されて処遇改善問題が膨らみ、子会社に関連した葛藤〔=対立〕も出てきている。

 公共部門における正規職転換を民間に拡散するという計画も全く進行されずにいる。政権の序盤期、不法派遣のような民間部門で発生した事件を中心に雇用労働部が介入する象徴的な姿があることはあった。ところが、前任の金榮珠長官が推進した、このような姿は今の労働部に探してみることが難しい。準備できずに推進して見たら、正規職転換が政府としては困惑する政策イッシュー〔課題〕に転落しているように思う。公共部門民間委託の正規職転換は、労働政策の全般的基調が後退してうやむやになった。12段階政策のような強力な推進を期待することが難しいならば、民間委託が無分別に拡散することを防いで、処遇を改善をする方式の政策が必要である。公共部門正規職転換政策全般について惜しまれると表現・評価するだけでは現れた問題点が少なくない。 

転換以後、公共部門労使関係・人事管理総合計画樹立必要

ノ・グァンピョ韓国労働社会研究所所長

  文在寅政府の労働政策は、公共部門非正規職の正規職化から出発し、この政策は労働界と国民から大きなく共鳴〔호응, 呼応〕された。ところで最近、韓国道路公社と韓国鉄道公社の非正規労働者たちの闘争で、政府の政策は非難の対象になっている。過去2年間、推進された正規職化事業(20196月末基準)で公共部門正規職転換対象のうち90.1%である185千人の正規職転換が決定され、この中の84.9%である157千人が実際に正規職に転換された。したがって、政府の正規職化政策は規模や推進状況を見るとき成功的といえる。公共部門で約20万人の非正規労働者たちが正規職に転換されて雇用不安から抜け出し、不足はあるが処遇も改善された。だが、一部子会社転換事業場の否定的な事例は、政府の政策意志を傷つけて効果性を落としている。尻尾が胴を揺さぶることを防がなければならない。この政策の最終目標は、民間部門の非正規職濫用規制と差別緩和にある。公共部門非正規職政策が民間部門の呼び水にならなければならない。政府はいまや転換された労働者たちの処遇改善・人事管理・団体交渉方案に対する総合計画を樹立しなければならない。

子会社運営関連の統一的指針作らなければならない

チョン・フンジュン韓国労働研究院副研究委員

  現在、進行中の3段階である民間委託事務正規職化の場合、生活廃棄物・電算メンテナンス・コールセンターは、特別な理由がなければ正規職に転換しなければならない。上水道検針は、1段階に分類され無条件に正規職に転換しなければならない。これだけでも規模がかなり多い。だが、個別機関がとても消極的ということが問題である。上水道検針と生活廃棄物は地方自治体所管であるが、びくとも動かない。労働部が地方自治体を管掌できないから、行政安全部とともに総合的対策を作って最後まで整備しなければならない(챙겨야 한다)。

 公共部門非正規職正規職転換で最も大きな問題は子会社であろう。子会社に転換して用役会社〔용역회사, 人材供給下請〕のようにしないために、昨年12月、政府合同で出したのが「望ましい子会社運営モデル案」である。だが、実行されないままである。政府が各機関に対して特にどのようにするという言葉がない。これだから子会社労働者は当初の約束と違う、数ヶ月過ぎて見ると、用役会社のようだ。直接雇用より駄目だという認識をすることになる。子会社運営と関連して統一的な指針が必要である。本当に用役会社のようになれば、正規職転換の意味が毀損される。

 最後に、非正規職正規職化規模も重要だが、雇用の質と持続可能性が重要である。正規職転換したが、また非正規職を採用して〔뽑다, 選んで〕はならない。正規職に転換された労働者に対する処遇改善と元・下請交渉のような措置が必要である。

公共機関が率先して危険・死の外注化問題 解決せよ

 イ・サンユン労働健康連帯代表

  外注化は、労働者安全と健康の危険を高める。私たちは様々な死亡事故を通じて危険の外注化、死の外注化がどんなに残酷な結果を産むのか、既によく知っている。ある事業場内の特定業務が外注化されて様々な業者が存在するとき、業務が分離されてコミュニケーション問題が発生して事故の危険が高まる。外注業者労働者は、請負業者の物理的環境、業務進行慣行、組織文化などになじまず、危険を知ることもできないまま働くことになる。多数の外注企業等は、労働力供給業者、人材派遣業者水準を越えない場合が多く、労働者の健康、安全管理能力がなく労働者たちを危険に放置する。労働者たちを死ぬことに追い込んでいる外注化問題を今こそ解決しなければならない。外注業者の力量を向上させることでは解決しない。請負業者が子会社を作って子会社の正規職として雇用するが、労働者の健康、安全問題解決には役に立たない。いくら子会社でも「業者」が違えば、業務分離化、コミュニケーション断絶、管理の非効率性などの問題は解決されないからである。今まで韓国の公共機関も競争導入、経営効率化という名目で多くの業務が外注化された。いまや問題解決のために公共機関が模範を示すときである。危険の外注化、死の外注化の行列を断ち切るために公共機関が「望ましい使用者」として自身の役割を尽くさなければならない。公共機関事業場で働く、すべての労働者の生命と健康を保障することは、そのような役割の中で最も基本的なものである。

直接雇用で外注化の弊害を正そう

キム・チョル社会公共研究院先任研究委員

 民主労総が、この7月、公共部門非正規職ゼネストなど強力な共闘を通じて正しくなされた正規職転換を要求したのにもかかわらず、政府はこれに対する明確な措置を全く取らないまま公共部門正規職転換政策を終えようとしている。だが、派遣・用役労働者の正規職転換1段階は、まだ36.6%が未完了の状況で、転換決定された場合も、公共機関だけ確かめてみれば子会社転換人員が56.2%である。今でもガス公社・発電会社・政府出資機関など、数多くの公共機関が使用者の子会社への固執で膠着状態に陥っていて、正規職転換がなされた以後にも依然として差別問題が解消されないでいることは皆が知っている。さらに、民間委託の正規職転換は推進さえされなくなっている。労働界も序盤には、正規職転換が正規職と非正規職すべての課題だったが、今は非正規職転換単位だけの問題に転落した感じがある。

 これを解決するために、まず正規職転換1・2段階の場合、年内に転換が終えられるように労政間の交渉を進める必要がある。正規職労組は賃金・団体協約に正規職転換を含んで年内に差別のない直接雇用のために共同するという点を明確にしなければならない。また、ソウル大病院派遣・用役非正規職の直接雇用合意が示したように、子会社方式正規職転換でない元・下請構造をなくす直接雇用を通じて外注化の弊害を根本的に解決しなければならない。もちろん転換労働者の場合、最大限に既存正規職と差別のない労働条件を適用しなければならない。

編集部labortoday

【関連文献】
脇田滋(2018)「韓国における国・自治体の非正規職問題」KOKKO32号 https://bit.ly/2li87wt

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