過重シフト・休憩なし…厚労省が「ブラックバイト」調査

http://www.asahi.com/articles/ASHC955P7HC9ULFA01H.html
朝日デジタル 2015年11月9日

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 学生が学業に支障をきたすほどの労働を強いられる「ブラックバイト」問題を受けて、厚生労働省が初めて行った実態調査の結果が9日、公表された。学生アルバイトの半数近くで、勤務シフトや賃金をめぐるトラブルが起きていたことが分かった。

ブラックバイト、相談ホットライン 10日午後6時から

 厚労省が8〜9月にインターネットを通じ、大学生、大学院生、短大生、専門学校生の計1千人が経験したアルバイトのべ1961件について調べた。

 すると1961件のうち48・2%、学生数の60・5%で労働条件に関する何らかのトラブルがあった。トラブルの件数で多かったのは「採用時に合意した以上の勤務シフトを入れられた」(14・8%)、「一方的に急なシフト変更を命じられた」(14・6%)など、勤務シフトに関するトラブルだ。

 「準備や片付けの時間に賃金が支払われなかった」「1日に労働時間が6時間を超えても休憩時間がなかった」など違法性が疑われる回答もあった。雇う側は、賃金や休憩時間など労働条件を書面で渡すことを義務づけられているが、調査では6割近くが書面で渡されていなかった。

 ログイン前の続き首都圏在住の大学2年生の男性も、こうしたトラブルにあったという。

 親の仕送りで足りない分を補おうと、昨年春に大学に入った直後から近所の飲食店で働きだした。契約書はなく、はじめは週4日、午後6〜11時ごろに働いた。しかし店が忙しくなり、人手が足りなくなると、店長らに「もうちょっと働いて」と頼まれた。

 さらに他のアルバイトが辞め、自分の出勤が週5日、6日と増えた。仕込みや閉店作業をまかされ、昼過ぎから午前0時の閉店後まで働くように。「大学に行かないと」という思いはあったが、退職を申し出ると店長に仕事のミスを責められ、辞められなかった。仕事と、その疲れから大学を休みがちになり、2年の前半に全単位を落とした。

 労働組合「ブラックバイトユニオン」(東京都)に助けを求め、8月に休職した。またアルバイトをするなら「希望通りの時間に働ける職場を選びたい」。

 労使で合意すればシフトの変更は合法だ。ただ、労働者は断りたいのに上司に頼まれて断りにくい場合もある。厚労省は経団連や日本商工会議所に対し、法令を順守し、無理な人員配置はしないよう文書で要請をすることなどを決めた。

 ブラックバイトの問題に詳しい佐々木亮弁護士は「人手が足りない時代だけに、経済団体や業界には学生のアルバイトを使い潰さないよう意識の転換が求められている。要請を『聞き置く』のではなく真摯(しんし)に耳を傾けて欲しい」と話す。(北川慧一、末崎毅)

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