残業NO 働き方改革大号令(ニュースクリップ2019) (12/28)

残業NO 働き方改革大号令(ニュースクリップ2019)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53170040Q9A211C1970M00/?n_cid=NMAIL007_20191228_K
2019/12/28 2:00日本経済新聞 電子版

〔写真〕帰宅する人たち(東京・丸の内)

今年は働き方や雇用環境が大きく変わる転換点となった。4月に施行された働き方改革関連法には残業時間の上限規制や、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差を是正する「同一労働同一賃金」などが盛り込まれた。有給休暇取得も義務となった。これを受け、場所と時間を選ばず働く「テレワーク」や仕事と休暇を両立する「ワーケーション」の導入が大企業を中心に進んできた。

■残業削減に本腰、生活に変化も

厚生労働省の毎月勤労統計によると、残業に相当する所定外労働時間は8月まで14カ月連続で前年同月実績を下回り、9月も横ばいだった。電通の新入社員が過労自殺して社会問題となったのをきっかけに企業は残業の削減に取り組んできたのを、新法が後押しした。例えばサントリーホールディングス。定型作業を自動化するロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)の導入や現場改革リーダーの任命といった仕組みを通じ、残業時間は18年に219時間と5年で2割近く減らした。

残業減の影響は働く人の行動様式などに変化を与えている。ヴァル研究所(東京・杉並)の経路検索アプリ「駅すぱあと」では夜間や深夜帯の検索が減っている。新宿や品川など都心オフィス街の主要駅を出発する検索数を2017年9月時点と19年9月時点で比べると、夕方から夜の早い時間帯が増えた一方、午後9時以降は減った。「早帰りの影響が出ているとみられる」(担当者)という。

朝食をコンビニで買って会社で食べるといった外食・中食の食機会数(平日)は19年6月までの1年間で約10億5千万回と4年前比で1割近く増えた。調査したエヌピーディー・ジャパン(東京・港)は「働く女性の増加や勤務スタイルの朝型シフトなどが影響している」と分析する。

■フレックスタイムやテレワーク、私生活と両立

単純に労働時間を減らすだけではアウトプットも減ってしまう。カバーするには労働生産性と労働参加率の向上がカギになる。子育てや介護などと仕事を両立させやすいテレワークの普及、勤務時間を固定しないフレックスタイム制の導入が進んできている。時間や空間、年齢など様々な制約に縛られない働き方を実現するための施策の重要性はますます高まる。政府が後押ししていることもあって、副業を解禁する企業も増えてきた。

出張前後に有休を付けて観光などを楽しんでもらう「ブレジャー」など新たな試みも登場した。経団連が新卒一括採用の見直しを表明するといった動きもあった。

一方、成果で賃金を決める脱時間給(高度プロフェッショナル制度)の導入ペースはなお鈍い。対象業務や年収などの要件が厳しいこともあって、企業が厚生労働省に届け出た対象者は6月末時点で300人強にとどまっている。

大企業では20年4月から同一労働同一賃金が適用される。すでに非正規社員への手当支給などを始めた企業もあるが、日本経済新聞社が19年8〜9月に実施した「社長100人アンケート」で対応が「完了した」と回答した企業は4割にとどまった。20年は正社員のあり方そのものも問われる1年となりそうだ。

コンビニ24時間営業に限界 人手不足が迫る見直し

〔写真〕深夜営業するコンビニエンスストア(都内)

全国に約5万8000店あり、消費者にとって欠かせなくなっているコンビニエンスストア。利便性の陰で、フランチャイズチェーン(FC)加盟店では人手不足を背景に経営環境が厳しくなっていた。2019年は24時間営業の限界が表面化し、大手が対応を迫られた。

2月、大阪府東大阪市のセブン―イレブン・ジャパンFC加盟店が人手不足を理由に営業時間の短縮を強行した。大手のFC契約では、人件費は加盟店側が負う。人件費の高騰で、深夜もアルバイトに頼らず自ら働くオーナーもいる。加盟店オーナーの労働環境に注目が集まり、ツイッターなどのSNS(交流サイト)では同情の声が上がった。

セブンは深夜休業のガイドラインを新たに制定し、11月からは一部店舗が深夜休業を本格的に始めた。ファミリーマートも11月、時短営業するかどうかを加盟店側が選択できるようにFC契約を改定することを発表した。

外国人材、単純労働にも門戸 受け入れ拡大にカジ切る

入管法改正で東京出入国在留管理局に設置された「特定技能」専用の申請窓口(4月、東京都港区)
画像の拡大
入管法改正で東京出入国在留管理局に設置された「特定技能」専用の申請窓口(4月、東京都港区)
人手不足にあえぐ日本にとって2019年は転換点の年となった。4月に改正出入国管理法が施行され、介護や外食など人手不足が深刻な14業種で外国人労働者の就労を認める新たな在留資格「特定技能」が導入されたためだ。対象業種の技能と日本語の試験に合格するなどの条件を満たすと、通算5年間在留可能なビザを取得できる。労働者としての受け入れを高度人材などに限定していた外国人政策を見直し、本格的な労働力活用にカジを切った。

これまで技能・技術の習得を名目に実質的に単純労働を担ってきた外国人技能実習生からの移行組も含め、政府は5年間で最大約34万5千人の受け入れを見込んでいる。三菱ふそうトラック・バスは11月、実習を終え特定技能に移行した2人を契約社員とした。すき焼き店などを運営するワンダーテーブル(東京・新宿)は12月に特定技能取得者1人を正社員として採用した。
 

この記事を書いた人