第28回 時間のちょろまかしのあの手この手

前々回、<「私的時間」という名の労働時間のちょろまかし>について書きました。これはサービス残業=賃金不払残業にほかなりません。厚生労働省によれば、賃金不払残業とは「所定労働時間外に労働時間の一部又は全部に対して所定の賃金又は割増賃金を支払うことなく労働を行わせること」(厚生労働省「賃金不払残業総合対策要綱」2003年)です。企業が労働者に賃金不払残業を強いるのは、それが人件費を減らし、利潤を増やすことを可能にするからです。

これに関連して、マルクスは『資本論』の「労働日」章で『工場監督官報告書』から次の一節を引いています。

法定労働時間を超える過度労働によって得られる特別利潤は、多くの工場主にとって、あまりにも大きい誘惑であり、これに抵抗できないように思われる。彼らは運よく発見されないことをあてにしており、発見された場合でさえも、罰金と裁判費用とが取るに足りない額なので、相変わらず自分たちには差し引き、利益が保証されると計算している。……一日中“こそどろの積み重ね”によって追加時間(追加利潤)が得られる場合には、監督官たちにとって、それを立証するのはほとんど乗り越えがたい困難である。

これを受けてマルクスは次のよう言います。

資本がこのように労働者たちの食事時間や休憩時間から「こそどろ」することを、工場監督官たちは、「数分のちょろまかし」、「数分のひったくり」と呼び、または労働者たちが仲間どうしで呼んでいるように「食事時間のかじり取り」と呼んでいる。

現代の日本では、これに類した時間泥棒がより大規模により多様な手口で行われています。

?タイムカードがなく使用者が残業時間を把握していない。?基本給あるいは歩合給のみで残業代は付かない。?支給される時間や金額に上限があり、それを超過する部分はカットされる。?労働者の自主申告に任せ、残業の一部か全部が請求されないか支給されない。?申告しても書き直される。?上司が認める範囲内しか残業代が出ない。?QC・研修・朝礼、ミーティング・清掃・着替えなどが業務外扱いをされる。?時間中の談笑・喫煙・トイレなどの時間を「私的時間」としてパソコンに入力させカットする。?休憩時間(食事時間を含む)の一部が削られる。?1分単位で記録すべき残業時間を30分単位などにして端数を切り捨てる。?わずかな職務手当や営業手当が出るだけで残業代は支給されない。

ほかにも巧妙な手口があったら教えてください。

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