9割の企業が失敗「働き方改革」の実態 上層部の勘違い、行動を改善する人が4・5倍になった実験 (1/6)

9割の企業が失敗「働き方改革」の実態 上層部の勘違い、行動を改善する人が4・5倍になった実験
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2020/1/6 07:00 (JST) ©株式会社全国新聞ネット

写真はイメージです。

 「働き方改革」が叫ばれて久しい。世間では「週休3日」「全員が17時台に退社」など、華々しい成功例が取りざたされるが、88%の企業は、働き方改革に成功していないという。米マイクロソフト業務執行役員を経て、現在は働き方改革を支援する会社代表を務める越川慎司さんは、2017年1月から19年4月にかけて東証1部上場企業を含めた、製造、流通、金融、自動車など19業種の528社の実態を調査。『仕事の「ムダ」が必ずなくなる 超・時短術』(日経BP)にまとめ、働き方改革の目的を勘違いしている企業に警鐘を鳴らす。
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■ 問い合わせ殺到するAI、こぞって導入する企業の勘違い
AI(人工知能)は様々なシーンで使われることが多くなり、スマートスピーカーや自動運転、深層学習などの言葉がメディアを賑わせています。働く個人にとって、最も影響があるのはRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)というツールです。間接業務を自動化する広義のAIの一つと捉えられ、提供側へ問い合わせが殺到しているそうです。
例えば、インターネットで必要な情報を収集・統合してシステムへ入力する作業や、財務レポートの作成など標準化された業務プロセスを自動的に行うこと、さらには過去のやり取りを学習して、顧客からの問い合わせなどに対応することもできます。
しかし、AIは神様でもマジックでもなく、RPAも多くの企業で成果が出ていません。
うまくいかない理由の1つは、他の人に引き継ぐことができない仕事はAIにも引き継ぐことはできないからです。「Aさんがいないと仕事が回らない」「Aさんの勘に頼って仕事を回している」などのケースです。

■ はき違えた「目的」
そもそも、特定の個人に依存して仕事が回っているのは危険です。業務を標準化して他の人と仕事が共有し、その人が休めるようにするなど、AIの導入以前にすべきことがあります。
528社の業務変革を支援してきましたが、最も効果があったのは「やめる業務を決めること」です。アジェンダがない定例会議、派手で凝った社内資料や「メールを見ていますか」というメールを送ること…。当たり前を疑って、勇気をもって不要な業務をやめていかないと、いくら時間があっても足りません。

 失敗している企業は、AIを導入することが目的になっています。あくまでITツールは手段です。「会社が儲かること」と「社員が幸せであること」を両立させることが目的です。

■AIを人手の代替にするはずが、人が増える
AIを入れることが目的になると、導入部門や導入業務の数と時期を決め、その達成に奔走していまいます。導入にあたっては担当者を増やし、人手不足解消の為にやっていたのに人員が増えた、と迷走する企業も多くあります。
AIを導入するのであれば、浸透・定着を目指して現場の社員たちが使いこなすことを目指してください。情報システム部門だけが旗振りするのではなく、各部門の有志をプロジェクトメンバーとして集め、各現場で浸透する策を出し合い実行していくことが成功へと導きます。ITが働き方を変えるのではありません。働き方を変える時に、ITが役立つのです。

〔写真〕政府は2016年9月「働き方改革実現推進室」を設置した。

■一斉に消えたオフィスの光、社員たちがこっそり向かう先
上から言われた事をだけひたすら行う「働きアリ」のような働き方が、会社にとっても個人にとっても望ましいものではなくなりました。来るべき変化を見越して、社員が自発的に動き、新たな儲け方を見つけて必要なスキルを身に付けていく必要があります。
しかし「残業するな。でも、業績は落とすな」という上からの指示(トップダウン)のみが行われている企業が大半です。これでは「働かせ方改革」です。その典型的な例が、オフィスの一斉消灯です。
 

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