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文化通信
DVD「シークレット・サンシャイン」/神の所在はどこ?
一人息子とともに地方都市ミリャン(密陽)に移り住むシングルマザーの悲劇とそれを見守る男の物語である。監督はイ・チャンドン。シングルマザー役はチョン・ドヨン。彼女に絡んでくる男にソン・ガンホ。チョン・ドヨンはこの映画でカ […] -
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DVD『素晴らしい一日』/視点の移動の見事さ
チョン・ドヨンはじつに愛想のわるい女優である。彼女の映画を5本見たが、どの映画でも憮然としていた。相手を睨み「文句があるのか」と目で演技をする。それがじつに上手い。 『素晴らしい一日』は日本の女性作家の短編小説をもとに […] -
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DVD『殺人の追憶』/僕はこの作品で韓国映画にハマッた!
映画は1980年代の軍事政権下に実際に起こった女性連続殺人事件を題材にしているが、物語はあくまでもフィクションである。監督はポン・ジュノ。日本公開は2004年。 冒頭、丸坊主の、小学校低学年ぐらいの悪ガキが麦畑の中から […] -
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『灼熱の魂』/私は何処から来たのか
★今回は「もし、まだ観ていなければ、DVDで シリーズ」ではなく、現在、劇場で公開(大阪地区)されている作品を紹介しよう。フランス語圏のカナダ映画『灼熱の魂』。監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ。作品は、キリスト教徒とイスラム教 […] -
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アメリカ映画『ノーカントリー』/痺れるほどのおぞましさ
★暴力描写がすごい。音楽は一切使用されず、風の音、忍び寄る足音、撃鉄を起こす音が、生々しい。その緊迫感に圧倒された。監督・脚本はイーサン・コーエンとジョエル・コーエンの兄弟。2007年度アカデミー賞作品賞、監督賞、助演男 […] -
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アルゼンチン映画『瞳の奥の秘密』/眼差しと言葉が物語をつむぐ
「もし、まだ観ていなければ、DVDで」シリーズ ★本作品は2009年度にアカデミー賞最優秀外国映画賞を受賞している。監督はファン・ホゼ・カンパネッラ。舞台は首都ブエノスアイレス。殺人事件を追う映画だが、サスペンスではな […] -
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今井正監督 没後20年によせて/たしかな「視点」
今井正監督 没後20年によせて/たしかな「視点」 ★高校生のとき、今井正の『仇討』(あだうち)(東映・1964年)を観て衝撃を受けた。次の日、映画好きの同級生にそれを話したけれども、「日本映画はもうあかんで。時代劇は落ち […] -
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『神々と男たち』/「死」、この絶対的なもの
★1996年にアルジェリアで実際に起こった、修道士の誘拐・殺害事件を題材にしたフランス映画である。2010年にカンヌ映画祭でグランプリを受賞している。監督はグザヴィエ・ボーヴォワ。 ★アルジェリアの山間部にあるカトリック […] -
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『わたしを離さないで』/この世の未練
★原作はイギリス作家カズオ・イシグロの同名小説、監督はマーク・ロマネク。作品はSF映画であり、映画史上初めて描かれる物語と喧伝されているけれども、それは配給会社が観客を動員したいがための宣伝文句であろう。しかし、映画は単 […] -
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『戦火の中へ』/いま、公開された理由は
★韓国映画は濃い。その濃密さが最後まで継続する。そんな映画が多い。ぼくは『殺人の追憶』(2003年、監督・脚本ポン・ジュノ、主演ソン・ガンホ)を観て衝撃を受け、それいらい、これと思う韓国映画は観ている。そして観た映画はす […] -
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『ヒアアフター』/彼はどこまでいい作品を量産するのか
★監督はクリント・イーストウッド、主演はマット・デイモン。この監督のことを、今さら、あらためて語ることもないだろうが、でも、語ってしまおう。 ★50年近く前に、クリント・イーストウッドがテレビ映画『ローハイド』で出ていた […] -
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『クロッシング』/3人の男の心の底にあるものは
★バイオレンス映画である。監督はアントワーン・フークア。ニューヨーク・ブルックリンにある低所得者の居住する公営住宅が舞台だ。そこでは麻薬取引や誘拐や殺人が毎日のように起こっている。そこの地域を担当する3人の警官のものがた […] -
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『バッド・ルーテナント』『マイレージ・マイライフ』/アメリカの異常
★今回は『マイレージ・マイライフ』と『バッド・ルーテナント』。ともにDVDが出ている。2作品とも異常な映画である。『バッド・ルーテナント』は描き方が「異常」であり、『マイレージ・マイライフ』は描く内容そのものが「異常」で […] -
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『クレージー・ハート』/落ちぶれた歌手の「悲恋」
★アルコールの失敗は身から出た錆というけれども、この作品はそれをまさに「絵に描いた」というか「地でいった」というのか、そういう映画であって、冒頭から呑み過ぎでふらつく主人公が出てきて、こいつ、きっと何かとんでもないことを […] -
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「マイ・ブラザー」/私の中にある地獄
★不気味な映画である。監督はジム・シェルダン。2007年、銀行強盗で服役していた弟のトミー(ジェイク・ギレンホール)が出所し、家に戻る。入れ替わるようにして米海兵隊大尉の兄サム(トビー・マグワイア)がアフガニスタンへ出兵 […] -
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映画『カティンの森』/アンジェイ・ワイダ監督の憤り
★ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督はソ連と当時の政府の圧制に抗し続けてきた映画人である。ワイダ作品にはその強烈なメッセージが込められており、いつまでもそれが残る。第2次大戦末期のワルシャワ蜂起を描いた『地下水道』(19 […] -
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「プレシャス」を観る/貧困という恐ろしさ
●貧困者は、?社会から、?企業から、?親族から、?教育を受ける権利から排除され、そして自分を排除してしまう。「こんな状況に陥ったのは自分の責任だ」と。経済的貧困は心をも貧困にする。それが最も恐ろしい。凄まじい勢いで心が荒 […] -
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ドイツ映画『アイガー北壁』を観る
ドイツ映画『アイガー北壁』を観る ★「極寒のちりもとどめず巌ふすま」《飯田蛇笏(だこつ)》 『アイガー北壁』はこの句と重なる。映画は2人の登山家、トニー・クルツ(ベンノ・フュルマン)とアンディ・ヒンターシュトイサー(フロ […] -
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アメリカの戦争/映画『ハート・ロッカー』と『リダクテッド』
★『ハート・ロッカー』を観た。監督はキャスリン・ビグロー。女性である。一貫してアクション映画を製作してきた。女性監督としてはめずらしい。映画のタイトルは隠語で「棺桶」を意味する。イラクに駐留するアメリカ軍の爆発物処理班の […] -
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「非日常」の出来事が身体に突き刺さるような映画
★映画の中の「非日常」が終わったあともその「非日常」が身体を浸蝕し、打ちのめされることがある。そんな映画を初めて観たのはヴィットリオ・デ・シーカ監督の「自転車泥棒」(イタリア・1948年製作)だ。それから数年後、第二次大 […]